戦後、葉山町に居とアトリエを構えた日本画家・山口蓬春(ほうしゅん)の作風の変遷をたどる収蔵品展「洋画から新日本画へ」が、山口蓬春記念館(同町一色)で開かれている。若かりし日に描いた油彩画のほか、初期の代表作など43点が並ぶ。
蓬春(本名・山口三郎、1893~1971年)は本格的に油彩画を学んだ後、日本画の道を究めた画家。展示は副題に「山口蓬春の飽くなき挑戦」と据え、戦前戦後を通じ、油絵の技法や洋画の知識を吸収しながら作り上げた作品を紹介している。
油彩画は東京美術学校(現・東京藝術大)西洋画科の入学前後に描いた11点を展示。板などの両面を使って肖像や風景、模写が描かれており、画家としての出発点を感じさせる。蓬春は日本画科に転科し、伝統的な大和絵の技法も研究。会場には、34歳の時に帝展特選に選ばれ、出世作となった大作「緑庭」が展示されている。平安時代の大和絵に似た、みやびな風景にスポットを当てたような光を重ねた独自の作風が目を引く。
他に、日本統治下の台湾のパイワン族の女性や生活を描いた絵や、収集していた古陶磁と果物の静物画などが並んでいる。記念館学芸員の吉田敬さんは「学生時代に描いた油彩画などを紹介しているが、それらが日本画家の蓬春の土台となっていることを感じてもらえれば」と話している。
2月3日まで。入場料は一般600円、高校生以下無料。月曜日は休館。問い合わせは同記念館電話046(875)6094。