

KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で舞台「春のめざめ」に主演する俳優の志尊淳(しそん・じゅん)(22)。ドイツの劇作家フランク・ベデキントによる1891年の作品で、思春期の少年たちの性の目覚めや抑圧する大人たちとの葛藤を描き、当時は扇情的だと上演が禁止された。「現代にも通じる普遍的な面があり、共感できる作品」と志尊は語る。
中心となるのはギムナジウムで学ぶ優等生メルヒオールと友人で劣等生のモーリッツ、幼なじみの少女ベントラの3人。志尊が演じるメルヒオールは、モーリッツに「子どもの作り方」を説明すると約束。半ば乱暴するようにベントラと関係し、妊娠させてしまう。
「確かに生々しい部分もありますが、理性で抑えきれない人間の衝動をこびずに、繊細に描いている。何かしらの抑圧は、誰もが感じたことがあると思うんです。本質的な部分は当時も今も変わらない」と志尊。
映画やドラマに引っ張りだこ。ミュージカルの舞台も踏んだが、本格的な演劇の舞台は初となる。不安を抱えながらも、演出を手掛けるKAAT芸術監督の白井晃の胸を借り、日々稽古に励んでいる。
「出演すると決まって、正直悩みました。でもやってみないと分からない、という気持ちもあり、自分が思っていることがどうこうというより、白井さんの狙い通りやってみようと」
共演するモーリッツ役の栗原類、ベントラ役の大野いととは、それぞれの演技について話すことはほとんどないという。
「おのおのがつくっているキャラクターとして対峙(たいじ)しています。僕自身、自分のことで精いっぱいというせいもありますが」と苦笑する。

将来を悲観し自殺するモーリッツ。ベントラも堕胎薬のせいで命を落とす。自責の念に駆られるメルヒオールは、死への誘惑を覚える。性的な面が注目されがちだが、メルヒオールの成長の過程も重要だという。
「メルヒオールは、命がどれだけ大切なものかに気付き、生に前向きに進んでいく。そういう部分に共感される方もいるのでは」と、幅広い世代に来場を呼び掛けている。
出演映画「帝一の國」が公開中。11月には映画「覆面系ノイズ」の公開も控える。
「俳優としてもっと視野を広げたい。期待されているところを超えられるのか、収まってしまうのかは自分次第。毎作品、真摯(しんし)に取り組んで、見る方の心を揺さぶることができたらうれしい」
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「春のめざめ」は5~23日、KAAT大スタジオで上演。一般6500円、24歳以下3250円など。5・6日はプレビュー公演で全席5000円。問い合わせはチケットかながわ電話(0570)015415。