3日からT・ジョイ横浜などで上映中。
ひたすら目の前の壁を「のぼる」少女と、その同級生たちを描いた同名の漫画を映画化。青春時代ならではの焦燥感やモヤモヤした気持ちを、俳優陣が繊細に表現している。
クライミング部に所属し、ボルダリングに夢中な女の子、小寺さん(工藤遙)=写真左。クラスメートで卓球部に所属する近藤(伊藤健太郎)=同右=は、一心不乱に壁を登る彼女をつい目で追ってしまっていた。ある日の放課後、進路調査票が未提出だった近藤と小寺さんを含む数名が教室に残される。熱中できるものがない近藤や、自分の夢に自信を持てないクラスメートたちの前で、小寺さんは「プロのクライマーになる」と堂々と宣言する。
小寺さんの姿に触発されたクラスメートたちは写真コンクールに挑戦したり、ネイルスクールに通い始めたりするなど、将来を模索し始める。「楽そうだから」と卓球部に入部した近藤も真剣に練習に取り組むようになるが、今までつるんでいた卓球部の友人との間には距離ができていた。やがて彼らは、小寺さんが出場するボルダリングの試合が迫っていることを知る。
ボルダリングの才能はあるが、少し抜けたところのある小寺さんを工藤が好演。真剣になれるものを見つけ、輝き始める主人公を演じた伊藤の表情も素晴らしい。適度な距離を取りながらも、若者たちの奮闘を温かく見つめる、すがすがしい作品。
監督/古厩智之
製作/日本、1時間41分