
世界的に人気を博したポップグループ「ABBA(アバ)」のヒット曲で彩られた劇団四季(横浜市青葉区)のミュージカル「マンマ・ミーア!」が、横浜で初めて上演される。躍動感あふれる楽曲や感動のストーリーで、劇場をポジティブな空間に包み込む。
「世代を超えてABBAの音楽の素晴らしさを体感できる。それがこの作品の魅力です」と話すのは、未婚の母ドナを演じる江畑晶慧(まさえ)。四季に入団して15年。2008年以降、本作に複数回出演している。
「チキチータ」や「S・O・S」といったABBAのヒットナンバー22曲で構成される「マンマ・ミーア!」の初演は1999年のロンドン公演。以来、世界400都市で上演されている人気作品だ。四季版は2002年の東京初演から全国9都市で披露され、総公演回数は3千を超える。

ギリシャの小さな島を舞台に、ドナと娘のソフィの絆を描いた心温まる物語。彼女らを取り巻く人物の自由で多様な生き方も見る者を引き付ける。ドナだけでなくソフィを演じたこともある江畑にとって、本作への思い入れは強い。
それは作品の持つドラマ性にも起因する。「ライオンキングやウィキッドなど、ミュージカルには非現実的なストーリーが多いけど、『マンマ・ミーア!』はまさに『私』の話。誰にでも起こり得るリアルな物語なのですっと入り込みやすいんです」
自分の父親が誰だか分からず不安なソフィは「父親とバージンロードを歩きたい」と願い、ドナの昔の恋人たちを自分の結婚式に招待する。彼らを見たドナは驚き、かつての後悔が胸に去来する。
劇中の楽曲は愛着のあるものばかりだが、中でも大ヒット曲「ダンシング・クイーン」が流れる場面は特別だと江畑は言う。
人知れず秘密を抱え、過去を思い出して悩み落ち込むドナを親友二人が励ます。「過去にたとえ悪いことがあったとしても、それも含めて人生。あなたは何も間違っていない、今のままでいいと、背中を押してくれる前向きなシーンにぐっときます」
シングルマザーとしてソフィを育て上げたドナを「過去を背負いつつ今を生きる強い人物」と表現する江畑。一方、「内に秘めた孤独感や弱さ、かわいらしさもある。そうした彼女の深い内面まで演じたい」と語る。
本作の特徴の一つに、劇場が一体となったカーテンコールがある。やはり「ダンシング・クイーン」などの心躍る楽曲に合わせ、観客も歌って踊る格別のひとときだ。
「晴れやかな表情のお客さんを見て、毎回私自身がエネルギーをもらいます」と江畑。「悩みや不安があっても、次に向けて一歩を踏み出そうと思える。前向きな空間に満ちたステージを皆さんにお届けしたいです」
※5月27日~8月10日。会場はKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)。S席1万1千円~C席3300円。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で上演日が変わる可能性あり。問い合わせは劇団四季☎(0570)008110。