落語家の三遊亭天どんと浪曲師の玉川太福(だいふく)が12月、横浜にぎわい座(横浜市中区)では初となる二人会に登場する。新作と古典の両方を手掛け、寄席や独演会で活躍する2人。創作落語教室の講師も務めている天どんに「二刀流」のこだわりを聞いた。
1997年、新作落語のパイオニア・三代目三遊亭圓丈に入門した天どん。二つ目時代に北とぴあ若手落語家競演会で北とぴあ大賞を受賞、真打ち昇進後の2014年度には国立演芸場花形演芸大賞銀賞を受賞した実力派だ。力みのない、ひょうひょうとした芸風を愛するファンも多い。
新作と古典の両方を初めて高座にかけるネタ下ろしの会を自ら年3回開催するほか、他の落語家と共に開催している新作落語ネタ下ろしの会などもあり「毎月何かしらの新しいネタを覚えている」という天どん。
これまでに創作した新作落語は約150作品に上り、寄席の雰囲気や出番順、落語会の趣旨などに合わせ、古典も含めた持ちネタの中からふさわしいネタを選ぶというマルチプレーヤーだ。
日常生活の中のちょとしたズレが笑いを生む、独自の新作のアイデアは「日常の中で無意識のうちに探している」という。今年作った「芸人と犬」は、ネタがすべってしまうことを探知できる犬と落語家の話だ。「新型コロナウイルスのにおいを嗅ぎ分ける探知犬のニュースを見て、へぇ、犬って何でもわかるんだなと思ったのがきっかけ。どんな物事もいろいろな角度から見るようにしています」と着想の源を語る。「新作落語を作るこつやくせのようなものはありますが、黄金律にこだわると変化がなくなるので、あえて公式は定めていません」
三遊亭圓朝の怪談「牡丹灯籠」を通しで語る落語会が人気を博すなど、古典落語も高く評価されているが「新作を作ると、古典落語の構造も分解して解釈することができるんです」と明かす。深い理解をもとに、古典も「自分の言葉で演じる」ことがこだわりだ。「江戸っ子口調は意識しますが、ニュアンスや抑揚で自分を出せるようになったので、新作と古典で演じ方に違いはなくなってきました」
先人たちによって磨かれてきた古典落語だが、受け継がれてきたものをそのまま演じることには否定的だ。甘納豆を食べるしぐさが見せ場のようになっている「明烏(あけがらす)」は「八代目桂文楽師匠の美しいしぐさを観客が楽しんでいたから今でもお約束のように残っているだけ」と分析。「テンポ良く、面白く見せるためには省略することも必要で、ネタを壊してはいけないというのは、考えていない落語家の言い訳です」と理論派の顔をのぞかせる。「新作と古典の両方を手掛ける意義の一つはそこにあると思います」
三遊亭天どんと玉川太福が横浜にぎわい座で二人会
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「天どん・太福 ふたり会 『これは美味い!』」12月13日午後7時開演。全席指定3200円。チケットは横浜にぎわい座、電話045(231)2515(11月1日発売開始) [写真番号:869741]