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オペラ「シャルリー~茶色の朝」 県立音楽堂で日本初演

芸能 | 神奈川新聞 | 2021年10月1日(金) 16:54

「シャルリー~茶色の朝」の舞台から(©Derrière Rideau)

 フランスの現代作曲家ブルーノ・ジネールによるオペラ「シャルリー~茶色の朝」が10月30、31日、県立音楽堂(横浜市西区)で日本初演を迎える。ファシズムに染まっていく社会への風刺を込めた物語を元にした一幕だけの小さなオペラで、ジネールは「気付かないうちに自由が奪われることは、誰にでも起こりうる」と警鐘を鳴らす。

 ある日突然「茶色のペットしか飼ってはいけない」との法律が出された社会。主人公は白黒の猫、友人のシャルリーは黒い犬を飼っていたが、それぞれを殺処分し、茶色の猫と犬を飼い始める。違和感を持ちながらも穏やかな暮らしを続けたが、シャルリーが逮捕される─。

 原作となった物語「茶色の朝」はフランスの心理学者フランク・パブロフが、極右政党の台頭に危機感を抱き、1998年に発表した物語で、99年には世界的ベストセラーとなった。

 ジネールは「戦争だけでなく、日常のさまざまな意味での全体主義にフォーカスしている。主人公のように、日々何となく『まあいいか』と受け入れ、気付いたら自由が奪われていたということは、誰にでも起こりうること」だと話す。

ブルーノ・ジネール(©Jean-Pierre Bouchard)

 オペラ化に当たり、演奏者を5人の器楽奏者と1人の歌手に絞った一幕の小さなオペラに仕上げた。5人の演奏者は時には音楽的要素としてせりふを発し、スローガンを叫ぶ。スタイリッシュで前衛的な音楽に満ちた舞台だ。2008年に世界初演。欧州で広く上演してきた「アンサンブルK」が演奏する。

 主人公を原作と異なる女性に据え、客観性を持たせた。「物語は衝撃的だが、主人公に自分をリアルに投影しすぎない意味でも、女声ソプラノのソリストにした。ナレーターの役割もある」という。

 社会的なメッセージが強い舞台だが、「まずは音楽を楽しんでほしい」とほほ笑む。「音楽はテキストでは気付けなかった感情に気付かせてくれるし、感情を増幅させる働きもある」

 ジネールは、ナチスの迫害にあったユダヤ人作曲家の音楽を掘り起こすなど、時代の波間に消えた芸術家たちを紹介する活動を行っている。今回の公演は3部構成で、第1部を「禁じられた音楽」の室内楽コンサートと題して、ナチスから逃れて米国へ亡命したユダヤ系作曲家パウル・デッサウが、画家ピカソの大作に呼応したピアノ曲「ゲルニカ」や、デッサウへのオマージュを込めたジネールの曲などを演奏する。

 第2部がポケットオペラ「シャルリー」、第3部はジネールをオンラインで結ぶクロストークで、ゲストスピーカーに美術家のやなぎみわ(30日)、哲学者の高橋哲哉(31日)を迎える。

 ジネールは「システムや社会という大きなことではなく、自分自身はどうなんだろう、と一人一人に考えてほしいと思っている」と観客への期待を話した。

 オペラ「シャルリー~茶色の朝」は10月30、31日、いずれも午後3時開演。仏語上演・日本語字幕付き。全席指定で一般5千円、24歳以下2500円、高校生以下無料。問い合わせはチケットかながわ、電話(0570)015415(午前10時~午後6時)。 

 
 

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