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10月、横浜能楽堂
宝生流の若き宗家、宝生和英が、能の名曲「井筒」に挑む

芸能 | 神奈川新聞 | 2021年9月24日(金) 13:08

「東京国立博物館の東洋館にはまっている。そこだけ時間が止まっているようで」と話す宝生和英。東京都内の宝生能楽堂にて

 宝生流の若き宗家、宝生和英(かずふさ)(35)が、能の名曲「井筒」に初めて挑む公演が10月、横浜能楽堂(横浜市西区)で行われる。現代劇の演出も手掛ける宝生は、今を生きる人々の共感が得られる舞台にしたいと話す。

 「井筒」は、在原寺に立ち寄った旅の僧が、紀有常の娘を名乗る霊と出会い、夫であった在原業平への変わらぬ恋慕の思いを知らされる物語。業平の形見の冠と衣を身に着けて舞う有常の娘は、井戸をのぞきこみ、水に映った姿に夫をしのんで消えていく。霊や異界が登場する「夢幻能」を代表する作品とされ、世阿弥自身が「上花なり(最上級の作品)」と記した自信作だ。

 そんな夢幻能の魅力を問うと「そもそも近代になって付けられた夢幻能という呼び方がぴんとこない」と宝生。自身の初演となる「井筒」に関しては「『待つ女』は現代にはそぐわない。男性主体のテーマ性はあまり好きじゃない」とも。ただし「お客さまが見たいと思っているものに応えたい。能で喜んでもらえることが自分の目的」という。

 やるからには今を生きる人々の共感が得られるものを、との思いがある。現代の視点をどのようにして盛り込むのか。「その時代の人間が演じることに意義があり、変化することに価値がある。イントネーションの付け方や、役を引き寄せる温度感。私は我を出す方だが、能はやりすぎるぐらいでも出てこない。ルールが決まっている中でも、できることはある」

 5歳で初舞台を踏み、宝生流20代宗家を2008年に襲名。伝統的な演出に重きを置きながら、ライフワークとする演劇の演出や能楽の海外公演にも積極的に取り組んできた。コロナ禍では自分のやりたいことを改めて考え、「ゼロから作っていきたいタイプ」であることから、新作の小書(こがき)(特別な演出)を準備している。

 能の魅力は「リラックス」と「時間のリセット」だという。緩やかなテンポやしぐさの能を鑑賞する時間は、時間の使い方が多様になった現代で、ある意味ぜいたくな使い方だ。歌舞伎のような派手さや分かりやすさといったエンターテインメント性とは全く異なる強みでもある。「2回、3回と見て分かってくる良さがある。イタリア映画に似ているかもしれない」

 横浜能舞台では20代半ばの頃、初めて他流の能楽師と共演し、貴重な経験をした。シテ方観世流の梅若家当主・梅若玄祥(現、梅若実)と共演した「蝉丸」の舞台だ。「脂ののった梅若先生と優劣はついているけれど、真剣同士の闘い。何かに対して闘う面白さを知った。通用しない部分は『なるほど、だから自分はだめなんだな』と納得できる。若いからただ従っておこうではなく、人間なんだから考えなきゃいけない」

 横浜能楽堂特別公演は10月17日午後2時開演。大蔵流・善竹彌五郎(ぜんちくやごろう)による狂言「二千石(じせんせき)」も。S席7千円ほか。問い合わせは同能楽堂、電話045(263)3055。

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