神奈川フィルハーモニー管弦楽団が7月17日、よこすか芸術劇場(横須賀市)で「県民名曲シリーズ」第11回公演を開催する。テーマは「踊る! 東ヨーロッパ以東の舞曲」。ブラームスのハンガリー舞曲第5番やハチャトリアンの「剣の舞」など心も躍る名曲が並ぶ。「ダンスの情景が浮かぶような演奏にできたら」と語る指揮者の熊倉優(まさる)に、プログラムのポイントを聞いた。
コンサートの幕開けはバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」。棒を使った勇壮な踊りから、神秘性を感じさせる美しい舞まで、短い中にも多くの表情を感じることができる楽曲だ。「複雑な交響曲と違い、舞曲は特にメロディーをダイレクトに感じられると思う。オーケストラとアイデアを共有しながら音を作っていくことにわくわくしています」と目を輝かせる熊倉。ブラームスの「ハンガリー舞曲」は第1番、第6番、第5番、ドボルザークの「スラブ舞曲」第2集からは第2番、第8番、第7番を演奏するが、同じ舞曲集から選んだ曲でも緩急を意識して曲順を考えたという。
ピアニストの熊本マリを迎えて披露するのはリストの「ハンガリー民謡による幻想曲」。演奏頻度は低いが「民謡のメロディーが次々に登場する魅力的な曲。ピアノの独奏部分も多く、どんな音楽が生まれるのか楽しみにしています」と熊本との初共演に期待を込める。
アルメニア出身のハチャトリアンが作曲したバレエ音楽「ガイーヌ」からは「剣の舞」「ガイーヌのアダージョ」「レスギンカ」を披露。ラストはボロディンの歌劇「イーゴリ公」の「ダッタン人の踊り」と盛りだくさんの内容だ。

このプログラムは7月18日、南足柄市文化会館(南足柄市)で同楽団の巡回主催公演「フューチャー・コンサート」としても演奏される。「いずれの作曲家も、この地域の民族音楽にインスピレーションを受けつつも、完成した曲にはそれぞれの独自性がある。作曲家6人それぞれのキャラクターや、1曲の中でも移り変わっていく風景を楽しんでほしいですね」
熊倉は1992年生まれ。2016年の第12回ドナウ国際指揮者コンクールで第2位、18年の第18回東京国際音楽コンクール「指揮」で第3位を獲得するなど今後の活躍に期待がかかる若手指揮者の一人だ。神奈川フィルとは19年以来3度目の共演となるが「若手の指揮者に機会を下さるのはありがたい」と感謝を込めて語る。「指揮者にとって大切なことの一つはオーケストラと音のエネルギーを共感し、交歓すること。それぞれプロの音楽家である楽団員の主体性が生きる自由な空間がありつつ、大きな枠でまとまっているイメージを目指しています」
近いうちにヨーロッパに拠点を移し、腰を据えて音楽の勉強に取り組む予定だ。「音楽家はインプットとアウトプットの繰り返し。しっかり蓄積ができるよう学びを深める期間にしたいですね」
【よこすか芸術劇場】7月17日午後2時開演。全席指定S席5千円など。
【南足柄市文化会館】18日午後22時開演。全席指定一般3500円など。いずれも問い合わせは神奈川フィル事務局☎045(226)5045。
指揮者・熊倉優に聞く「県民名曲シリーズ」のポイント
2016~19年までNHK交響楽団・首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィと同楽団のアシスタントを務めた。「指揮者としての考え方のベースを学ばせてもらった、かけがえのない時間でした」=横浜市内 [写真番号:678395]
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