28日からイオンシネマみなとみらいなどで上映。
椰月(やづき)美智子の同名小説を映画化。「石橋ユウ」という同じ名前を持つ10歳の息子を育てる、3人の母親の物語をスリリングに描く。幸せな日常がじわじわと崩壊していく様子は生々しく、俳優たちの鬼気迫る演技に息をのむ。
フリーライターの石橋留美子(菅野美穂=写真)はスーパーで買い物中、カートを使って暴れた息子の悠宇に雷を落とすが、周囲の視線にいたたまれなくなる。フリーカメラマンの夫は勝手気ままな性格で、やんちゃな子どもたちの面倒を見ることもせず、仕事が軌道に乗りかけている留美子はいらだちを募らせる。
留美子の子育てブログの読者で、シングルマザーの石橋加奈(高畑充希)はアルバイトを掛け持ちしながら息子の勇を育てている。素直な息子に加奈は惜しみなく愛情を注ぐが、勇は加奈に言えない思いを抱えていた。一方で、同じく優という息子を持つ専業主婦の石橋あすみ(尾野真千子)は余裕のある暮らしぶり。明るく、学業の成績も優秀な優はあすみの自慢だったが、ある日、同級生の母親から「あんたの子どもは悪魔だ」と罵倒される。
冒頭で、母親に激しい虐待を受け、ぐったりと動かなくなった「ユウ」は誰だったのか。見る者の緊張感を最後まで途切れさせない濃厚なドラマ。追い詰められていく母親たちを菅野、高畑、尾野が熱演。最後にもたらされる希望の光が美しい。
監督/瀬々敬久
製作/日本、2時間4分