落語家の桂三四郎が5月15日、横浜にぎわい座(横浜市中区)で柳亭小痴楽との二人会に登場する。六代目桂文枝の弟子として上方落語協会に所属しているが、約10年前から東京を拠点に活躍。「才能と華があり、嫉妬してしまう後輩の一人」と語る小痴楽とともに、勢いのある落語で観客の心をつかむ。
文枝譲りの新作落語が高く評価されている三四郎は1982年兵庫県出身。落語家になることを決めたのは、大学卒業を間近に控えた時期だった。もともと芸人になるつもりだったが、村上龍の「13歳のハローワーク」を読んで落語家という職業を認識したという。多くの名人のCDを聞き込み、強い衝撃を受けたのが文枝の創作落語「ゴルフ夜明け前」。「落語は昔話というイメージだったけれど、自分で話を作っても良いんや、ということに魅力を感じて」2004年に入門した。
文枝一門は大学の落語研究会出身者が多く、高座を経験することなく落語の道に進んだ三四郎は異色の存在。「師匠の稽古は弟子が覚えてきた話を横から見るスタイルなんですが、1年たっても落語が板につかない僕を見るに見かねて、弟子の中で初めて対面で稽古をつけてくれました」と苦笑いしながら振り返る。
文枝の芸を支えるのは「最新のトレンドを常に取り入れ、落語に生かそうとしているストイックさ」。そんな師匠の背中を追い掛け、鍛錬を重ねてきた三四郎は今年、第6回上方落語若手噺(はなし)家グランプリで念願の初優勝を果たした。決勝戦のネタは源平合戦の一場面を語る「扇の的」。「師匠のお母さまや奥さまが亡くなるなどつらい出来事が続いていた一門に、明るい話題を届けることができました」とほっとした表情を見せる。
笑福亭鶴瓶の誘いで上京したのは「漫才至上主義の大阪に比べて落語家が尊重されており、客層も若かったから」。しかし上京直後には東日本大震災が発生し仕事が激減。「落語家を続けられないかもしれない」と思ったこともあったそうだが、地道に独演会を続けファンを増やしてきた。
関西弁も生かした明朗な語り口や畳み掛けるような笑いが魅力だが、同世代の落語家にはいつも刺激を受けるという。「小痴楽くんを筆頭に、桂宮治くんや春風亭昇也くんなど、それぞれが個性を持っていて面白い。上方落語には真打ち制度がないのですが、東京では若手が真打ちを目指して正々堂々と競争しているところもすがすがしくてうらやましいですね」
現在は寄席のほかにも、定期的にオンライン落語会を配信。企業の依頼に応えて新作落語を創作するなど意欲的な活動を続けている。目指す落語家像を聞くと「面白さを追求するのは今後も変わらないのですが、聞いてくれた人の心が震えるようなパフォーマンスができたらいいですね」と力を込めた。(太田 有紀)
5月15日午後2時開演。全席指定3200円。チケットは横浜にぎわい座、電話045(231)2515。
心を動かす落語家に 柳亭小痴楽との二人会に登場の桂三四郎
古典落語と新作落語は落語家としての「両輪」。「両方に取り組むことでまっすぐに進める。新作落語は、トリに披露できる話も作っていきたいですね」=横浜にぎわい座(撮影・立石祐志) [写真番号:603666]
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