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落語の世界に救われて 三遊亭萬橘インタビュー

芸能 | 神奈川新聞 | 2021年3月25日(木) 11:22

横浜にぎわい座は、毎年正月に五代目円楽一門会で興行を行うなじみ深い場所。「真打ち昇進披露で、圓橘師匠が十八番の『稲川』を演じてくれたのもうれしかった思い出です」=東京都内(撮影・立石祐志)

 4月12日、横浜にぎわい座(横浜市中区)で開催される「神奈川を巡る落語会」に三遊亭萬橘(まんきつ)が登場する。エネルギーに満ちた落語で観客を笑いの渦に巻き込む、五代目円楽一門会のホープ。落語という芸能が持つ、独特の魅力について聞いた。

 神奈川という舞台に特化した落語会は横浜にぎわい座でも初の試み。同市磯子区の護念寺が舞台の「強情灸(きゅう)」を三遊亭わん丈、神奈川宿の「宿屋の仇討(あだうち)」、小田原宿の「抜け雀(すずめ)」をそれぞれ瀧川鯉昇、古今亭志ん輔が披露する。萬橘が演じるのは川崎大師を舞台にした「大師の杵(きね)」。若き日の空海に宿屋の娘が恋心を抱くストーリーで、主に落語家の地の語りで展開される「地噺(じばなし)」だ。「落語としては珍しく、美しい女性の純愛が出てくる。地噺は落語家のパーソナリティーが全面に出ますが、アタシが娘さんの恋心に共感できるかは分かりません」とニヤリと笑う。

 1979年愛知県豊川市出身。法政大学で落語研究会に入ったことが落語家になる道につながった。「いろいろなサークルを見て回った中で、落語研究会だけは対応が雑で、取り繕うところがなかった。落語という芸能の『来る者拒まず去る者追わず』という、温かさと冷たさが同居する魅力を体現していて、それがすごく居心地が良かったんです」。人前で落語を披露し、観客に「うける」という体験をしたことも自己肯定感につながったという。

 2003年に三遊亭圓橘(えんきつ)に入門、13年には真打ちに昇進し四代目「萬橘」を襲名した。「萬橘」の名前を継ぐことには迷いもあったという。初代は明治時代、歌と手踊りを得意とした「へらへらの萬橘」だが「二代目は若くして亡くなり、三代目は自殺未遂を起こしていて、画数もあまり良くない。でも師匠が言うように、落語の世界に脈々と続いているものを引き継ぐのも大事だと思ったんです」

 入門当初は、遅刻の理由を面白くごまかすこともできず「自分は芸人としては根が真面目すぎる」と苦笑する萬橘だが、高座から客席に届く熱量はすさまじく「普通の人間だからこそ、その話の面白さをしっかりお客さんに伝えることを意識している」と言い切る。あくまでも自分の仕事は「楽しい空間を演出すること」という信念から、無観客ライブ配信も一切行っていないという。

 落語家として活動することで初めて「社会人たり得ている」と自己分析する萬橘にとって落語は「救いになる場所」。競争原理に支配されず、多様な個性が共存する粋な世界だ。「江戸時代の話だから生々しい体感はないけれど、だからこそ共感できることもある。落語自体が生きることの一助であることを実感できさえすれば、落語家でい続けてもいいのかな、と思っています」(太田 有紀)

 午後7時開演、全席指定3200円。チケットは横浜にぎわい座、電話045(231)2515。

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