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劇団ダルカラードポップ
舞台「福島三部作」 被災地で耳を傾けた戯曲

芸能 | 神奈川新聞 | 2021年2月5日(金) 13:57

第三部「2011年:語られたがる言葉たち」(©bozzo)

 福島と原子力発電所の50年の歴史を描いた劇団ダルカラードポップ(東京)の舞台「福島三部作」が今月、横浜で上演される。作・演出は劇団主宰の谷賢一。被災地で耳を傾けた「福島の声」を基に戯曲を書き上げた。「福島は広島や長崎と並び、歴史的な意味を持つ場所となった」。演劇を通じてその意味を語り続けようと、心に決めている。

 原発が立地する福島県双葉町で生まれた3兄弟の視点から日本社会のありようを見つめる本作は、およそ6時間に及ぶ3部作。2019年に一挙上演し、1万人超を動員。20年には岸田國(くに)士(お)戯曲賞を受賞した。

 町が原発誘致を決めた1961年、旧ソ連チェルノブイリの事故が起きた86年、そして2011年の東京電力福島第1原発事故後を描く。東京と地方の格差、雇用と経済の問題、県民同士の分断、差別や風評被害といった人間の放つ悪意。原発に翻弄(ほんろう)される人々の姿が克明に浮かび上がる。

 母の出身地である福島で生まれた谷。父は原発で働いたことがある技術者だった。「世界史に名が残るような事故」が地元で起き、古里を追われる人が大勢生まれた現実を前に「何か自分で書けることはないか」との思いに駆られた。

第一部「1961年:夜に昇る太陽」(©bozzo)

 16年夏からおよそ3年、福島に通い農家や道ばたで出会った人ら数百人に話を聞いた。見聞きしたエピソードをつなぎ合わせてこの戯曲を手掛けている。

 「自分から震災や原発のことは聞かない」と決めていたが、「言葉が近寄ってくる」感覚を覚えるほどに、自ら口を開く人ばかりだった。「『語られたがる言葉』がある。それを実感する日々だった」という。

 その言葉の裏側までを想像し、立ち上る悲劇や葛藤を記録する。劇作家としての真摯(しんし)な営みが3部作に凝縮されている。

 本作は「死者の声」にも耳をそばだてた。東日本大震災で1万6千人近くが亡くなり、原発事故では日常を奪われ、自ら命を落とした人たちがいる。「ここでもう一度立ち止まり、亡くなってしまった人の思いに触れたい」。効率や発展だけを考えていたら絶対に聞こえてこないというその声を、劇中に登場させている。

第二部「1986年:メビウスの輪」(撮影・白圡亮次)

 本作をきっかけに改めて演劇の本質に立ち返った。異なる立場や価値観を持つ者たちの対話を示したものが演劇だ。3部作の上演後、観客が主体的に自身の考えを深めている感触が得られたと谷は言う。

 「舞台上で繰り広げられる議論を通し、登場人物が目の前で生きている感覚になったのだと思う。自分ならこうする、再生可能エネルギーはどうあるべきか…。込み上げる思いを語ろうとする空気が生まれる。それこそが、民主主義や議論の場として在り続けてきた演劇の魅力です」

 原発の安全神話が崩れ去って10年。それでも新増設や再稼働を求める声が自民党の議員らから出ることに「事故から何も学んでいない」と落胆しつつ、「原子力とどう向き合うべきか、この先の人類にとっても課題となる」と力を込める。

 自身にとって「ただの田舎」だった福島が、被爆地の広島と長崎と同様に人類史に刻まれる地名となった。だからこそ、事故からどれだけの時がたとうとも、「語られたがる言葉たち」と共にありたいと思う。「演劇を通じて語り継ぐことで、後世を生きる人たちにも、その意味を伝え続けたい」

「福島三部作」を手掛けた谷賢一=横浜市中区(2020年10月撮影・立石祐志)

 「福島三部作」は6~14日に開催される「国際舞台芸術ミーティングin横浜」(TPAM)の一環で、12~14日にKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で上演(前売り券はほぼ完売)。9~12日にライブ・録画配信する。料金などの詳細はTPAMの公式サイトで。

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