8日からTOHOシネマズららぽーと横浜などで上映中。
1918年、富山県魚津町(現・魚津市)で起こった米騒動を題材にした物語。戦前で最大規模となったこの米騒動は、やがて全国規模の民衆暴動へと広がった。「家族においしい食事を食べさせたい」と願う女性たちの願いが、大きなうねりとなっていく過程を一人の女性の視点から描く。
農村から漁師町に嫁いだ松浦いと(井上真央)=写真=は3人の子を持つ〝おかか〟として家族を支えていた。魚が取れない時期、夫は数カ月出稼ぎに行くため、家族を養うのはいとの役目。シベリア出兵がうわさされる中、北海道へと出港する舟に米俵を運び、日当の20銭で米を買っていた。
しかし、米の需要増を見込んだ投資家による買い占めの影響で米の値段は高騰。苦しむおかかたちはリーダー・清(きよ)んさのおばば(室井滋)を中心に、米の積み出し阻止や米屋の前での抗議行動に出るが失敗。米屋の女将(おかみ)による分断工作もあり、おかかたちの気持ちはばらばらになってしまう。
主人公がおかかとして自信をつけていく過程や、息子を兵隊にさせまいとする決意、新聞社がどのように騒動を伝えたかなど、焦点が散漫になってしまったのは残念。しかし井上の強く美しいまなざしが求心力を持って作品をまとめあげている。夏木マリが厳しくも温かい、いとのしゅうとめを好演。素朴なメークでも迫力を発揮しており、さすがだ。
監督/本木克英
製作/日本、1時間46分