13日から横浜ブルク13などで上映。
直木賞を受賞した、桜木紫乃の同名小説を映画化。北海道釧路市のラブホテルを舞台に、さまざまな事情を抱えた男女の人間ドラマが展開される。主人公を演じた波瑠の、芯の強さを感じさせるまなざしと凜(りん)とした姿が、作品に切なさと美しさをもたらしている。
ラブホテル「ホテルローヤル」を経営する家庭に生まれた雅代(波瑠)=写真=は大学受験に失敗し、しぶしぶ家業を手伝っていた。アダルトグッズ会社の営業、宮川(松山ケンイチ)への恋心を秘めつつ、洗濯と清掃に励む毎日。そんなある日、母・るり子(夏川結衣)が愛人と駆け落ちしてしまう。パチンコ通いで家に寄りつかない父・大吉(安田顕)に代わり、雅代はホテルの経営者となる。
子育てと親の介護に追われる夫婦や、身寄りのない女子高生と妻に裏切られた高校教師など、さまざまな事情を抱えた人々を迎え入れるホテルローヤルだが、ある事件をきっかけにマスコミの標的になってしまう─。
実力派の俳優陣が、さえない日常への諦めと、お互いの肌に触れ合うひとときの癒やしを丁寧に表現。ふとした表情から、それぞれが抱える孤独ややるせなさ、これまでの人生が伝わってくる。短編小説の形だった原作を、雅代を軸にした一つの物語に再構築したことが奏功。両親への屈折した感情を乗り越え、自分の足で歩き出す雅代の姿がすがすがしい。
監督/武正晴
製作/日本、1時間44分