写真をスマートフォンやタブレット、パソコンにそのまま記録したり、紙に記したものをスキャナーで取り込んだりするなど、デジタル化によって場所を取らずにファイルを保存することが当たり前になりました。
しかし、人は紙に書かれたものの魅力もよく分かっているのではないかと思います。例えば、直筆のサインを大事にするように、単にテキストデータでは代用が利かないものがあることを知っています。お子さんが手で直接描いた絵や、ペンや鉛筆でじかに記した文字には、データには置き換えられない情報や思い出が詰まっています。
それらには、文字の形や濃淡、強弱、筆のタッチを含め、書かれたその時の時間や空気感が表れます。見る側は、デジタルデータでは得られない人のぬくもりや魅力に気付くのではないでしょうか。
夏休みに、絵や文字を紙にかいて残してみませんか。自分のオリジナルの製本をして「夏休み思い出ブック」をつくりましょう。今回は、ハードカバーの本をつくる方法を紹介します。
本のとじ方にはいろいろありますが、一般的な製本は、穴を開けて糸を使用します。家庭では難しいので、ここではホチキスを使用します。ただし、ホチキスは湿気で針がさびることがあるので、さびにくいステンレス製の針を利用してもよいでしょう。
夏休みの日記を書いたり、写真を貼ったりイラストを描いたりして、すてきな思い出をつづりながら自分だけの本にしてみましょう。
【材料と用具】
・白ボール紙(板紙)
・148㍉×100㍉のはがきサイズ(無地)の紙30枚
・テーピングテープ(非伸縮)
・木工用接着剤
・ホチキス
・スティックのり
・目玉クリップ
・カッターナイフ、カッターマット
・色画用紙(表紙用+「見返し」用)
・スプーン
・輪ゴム
【つくり方】
「本文(本の中身になる部分)」の紙
(1)厚さ3ミリ以下になるよう、はがきサイズの紙10枚を重ね=写真①、輪ゴムでまとめ、端から5ミリのところを表から3カ所、裏から2カ所ホチキスで留める=写真②。ホチキスの針が出っ張らないよう、スプーンで平らに押しつぶす。この束を三つつくる。
(2)各束のホチキス部分5~10ミリ幅と背の部分に木工用接着剤を付けて接着し=写真③、目玉クリップなどで押さえてしっかり乾燥させる=写真④。
(3)「見返し」(本文と表紙をつなぐ紙)となる色画用紙を、本文の横の長さの2倍(約300ミリ)にし、二つ折りにする=写真⑤。これを二つつくる。
★厚めの丈夫な色紙がよい。
(2)で乾燥させた本文のホチキス部分の両側5~10ミリ幅に接着剤を付け、色画用紙を外側に1枚ずつ接着=写真⑥、目玉クリップなどで押さえてしっかり乾燥させる=写真⑦。
(4)乾燥後、テーピングテープを背の部分と背表紙の外側をつなぐように貼り、接着剤を全体に塗り、乾燥させる=写真⑧。これで本文の完成。
【表紙】
※表紙はハードカバーにするため、白ボール紙を3枚重ねて接着する。
(5)表紙と裏表紙は147ミリ×106ミリに、背表紙は12ミリ×106ミリに切る。
★紙は繊維の方向で反りやすい性質があるため、3枚のうち1枚の向きを変えて挟むように接着する。表紙、裏表紙、背表紙の1と3、2を違う向きにする=写真⑨。2を間に挟み、1~3の順で接着する。
★写真⑨はA4の紙から表紙、裏表紙、背表紙を3枚とる図。
★別サイズの「本文」でつくる場合、白ボール紙のサイズは次の通り。
【表紙・裏表紙】
横の長さ:本文より1ミリ短く
高さ:本文より6ミリ長く
【背表紙】
横の長さ:本文の紙の合計の厚みより4ミリ長く
背表紙の高さ:本文より6ミリ長く
(6)表紙に凹みを付ける場合は、表紙1を、タイトル文字のデザインに合わせて写真のようにカッターナイフで切り取る=写真⑩。
(7)3枚ずつを接着剤で接着し=写真⑪、重しを載せて乾燥させる。
★紙を破らないようにくしゃくしゃにして「もみ紙」にすると紙が柔らかくなり、紙のしわが革のような風合いになる=写真⑫。もみ紙にする場合は、もむ前と比べて紙のサイズが少し縮むので、縦横を10ミリ程度長くしておく。
(8)表紙カバーとなる色画用紙を、写真⑬のように、外周に15ミリずつ、背表紙の両側に8ミリずつ隙間が開くサイズにカットする。
(9)接着剤を塗り、表紙カバーの紙に、表紙、背表紙、裏表紙を接着し、特に表紙で凹ませた部分は、きわの部分を細かくスプーンで圧着する=写真⑭。
(10)表紙カバーの角4カ所を、白ボール紙の角から5ミリ外側を斜めにカットする=写真⑮。上下15ミリの部分を折り曲げて、接着剤で接着し、スプーンでこすって圧着する=写真⑯。表紙カバーの左右の部分を折る前に、4カ所の角を写真⑰のように爪で内側に折り曲げる。次に表紙カバーの左右を接着する=写真⑱。カバーの完成=写真⑲。
(11)(4)の両側にスティックのりを全面に塗り=写真⑳、写真㉑のようにカバーとの隙間が同じになるように調整し、スプーンで圧着する=写真㉒。
(12)最後にタイトル文字を紙に書き、凹みに貼り付けて完成=写真㉓。
※上級編として、作品写真の「猫の形の本」のように、本文の紙とハードカバーの形を変えてつくることもできます。
サイズは「表紙と裏表紙は、本文の紙の幅より1ミリ短め、高さは6ミリ長め」、「背表紙は、本文の厚さより4ミリ長め、高さは表紙と同様、もしくは本文の形に合わせて」でできます。
(注)カッターナイフを使う時はおうちの人に手伝ってもらおう
いなだ・だいすけ 相模女子大学芸学部子ども教育学科教授。私立小学校図画工作専科教諭14年、同付属幼稚園の絵画講師を13年務めた後、オーストラリア・メルボルンに留学し、RMIT大大学院を修了。NPO法人ガリレオ工房に所属し、稻田醍伊祐の名で造形作家としても活動している。