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神奈川フィルハーモニー管弦楽団創立50周年
日本を代表するオーケストラ 神奈川フィルの魅力に迫る

文化 | 神奈川新聞 | 2020年4月21日(火) 17:26


 県内を中心に演奏活動を続けてきた神奈川フィルハーモニー管弦楽団がことし創立50周年を迎えた。首都圏に数多くのプロオーケストラがひしめく中、クオリティーの高い演奏と地域に根付いた活動で支持を拡大。クラシック音楽の専門誌「音楽の友」(音楽之友社)2018年4月号で発表された「あなたの好きな日本のオーケストラ」では4位を獲得した。演奏家とそれを支えるスタッフの視点から、神奈川フィルの魅力に迫る。

地域に貢献 子どもたちに感動体験を


子どもたちとオーケストラが心を合わせて演奏した「ゆめコンサート」=横須賀市立荻野小学校
子どもたちとオーケストラが心を合わせて演奏した「ゆめコンサート」=横須賀市立荻野小学校

 養護施設などでの室内楽ボランティア・コンサートのほか、県内外の小中学校に出向き、本格的なオーケストラの演奏に触れる機会を提供している同楽団。2005年から県と共催で行っている「神奈川県子どもたちの音楽芸術体験事業 ゆめコンサート」は、毎年県内3カ所の小学校に音楽を届けている。

 1月30日に横須賀市立荻野小学校で行われた「ゆめコンサート」では、ビゼーの「カルメン」前奏曲やシベリウスの交響詩「フィンランディア」を披露。当日は子どもたちだけでなく、保護者や地域の人々が体育館に集まり、美しい演奏に耳を傾けた。

 この企画の特徴は児童との共演。今回のコンサートでは、1~3年生はカスタネットや鈴、鍵盤ハーモニカを使ってレオナルド・モーツァルトの「おもちゃの交響曲」を、4~6年生はソプラノリコーダーを使ってエルガーの「威風堂々」をオーケストラと合奏した。

 コンサートに先立ち、19年11月28日には楽団員と指揮者の阿部未来さんが同校を訪れ、児童らを対象に演奏のワークショップを行った。プロからの指導を受けた子どもたちはその後、音楽の授業の中で練習に励み、本番では堂々とした演奏でオーケストラと共演を果たした。

 ワークショップで指導に当たった首席フルート奏者の江川説子さんはコンサート後、「子どもたちは音楽に純粋に反応するので、普段とはまた違った緊張感と手応えがある。記憶に残る体験になるように、毎回気合いを入れて取り組んでいます」と充実した表情で語った。

雰囲気いい大切なホーム 
石田泰尚/首席ソロ・コンサートマスター


「理論派の崎谷と感覚派の僕はタイプが異なる。違うアプローチがある事がオーケストラにとってプラスに働くと思う」(撮影・立石祐志)
「理論派の崎谷と感覚派の僕はタイプが異なる。違うアプローチがある事がオーケストラにとってプラスに働くと思う」(撮影・立石祐志)

 2001年、当時の常任指揮者だった現田茂夫さんに誘われ、楽団のコンサートマスターとなった石田泰尚さん。「神奈川フィルに移籍してから20年目になる。現田さんをはじめ、団員や事務局にはとても感謝しています。雰囲気もいいし、大切なホームだと思っています」と語る。

 「昔から良い演奏をしていたと思うけれど、経験を重ねて、オーケストラの音楽的レベルは高くなってきている」と分析する。「特に02年から09年まで、首席客演指揮者・音楽監督としてオーケストラを導いてくれたハンス=マルティン・シュナイトさんの存在は大きかった。すごく厳しい方で、とにかく楽譜に忠実に、と言われたのを覚えています。とても勉強になったし、かわいがってもらった。オーケストラにとっても大切な財産になりました」

 現在の常任指揮者の川瀬賢太郎さんについては「真面目ですごく勉強してくるし、アグレッシブな指揮も魅力。フレンドリーなキャラクターで、団員とコミュニケーションをしっかり取っている。5年後、10年後の彼がどうなっているかも楽しみですね」と笑みを浮かべる。

 21年2月の定期演奏会では日本初演となる、ウィントン・マルサリスの「バイオリン協奏曲」にソリストとして挑む。「難しいけれど格好いい曲。期待していて下さい」

最も緊張感じる楽団 
川瀬賢太郎/常任指揮者


「僕らは温かい家族だからこそ、良い演奏を実現するためなら、実りあるけんかも必要だと思っています」(撮影・立石祐志)
「僕らは温かい家族だからこそ、良い演奏を実現するためなら、実りあるけんかも必要だと思っています」(撮影・立石祐志)

 「神奈川フィルは、特に古典を奏でる音色が美しく、ピュアな響きが魅力」と分析する川瀬賢太郎さん。14年から常任指揮者を務めるが「自分がこのオーケストラを、何らかの方向に導いていこうというプランはない」と断言する。「常に団員とコミュニケーションを取りながら、より良い演奏を模索しています」

 歳月を重ね、オーケストラとの緊張関係は「むしろ増している」という。「このオーケストラの前に立つことに慣れてしまったら、それは指揮者としての死を意味する。自分のホームではあるけれど、日本各地のオーケストラを指揮させてもらう中で、いちばん怖い場でもあります」

 2人のコンサートマスターについて聞くと「石田さんは一見怖そうだけど、すごく親分肌だし繊細さも持ち合わせている素晴らしいバイオリニスト。﨑谷は同年代で、すごく信頼しているけれど同時に手ごわい存在でもある。彼の熱いエネルギーに、いつも刺激を受けています」と語った。

 「この50年間、多くの指揮者や音楽監督、団員が神奈川フィルの音楽を磨き上げてきたことに敬意を払うと同時に、支えてくださったお客さまや自治体、企業の皆さまに感謝を伝えたい」と語る川瀬さん。「県内各地での巡回公演や、マーラーの『千人の交響曲』など、僕も今期のプログラムをとても楽しみにしています」

県民に音楽届ける決意 
田賀浩一朗/広報宣伝部


「2011年の東日本大震災の時は、楽団員の意思で募金活動やチャリティーコンサートも行った。主体性があっていいオーケストラだと思います」(撮影・立石祐志)
「2011年の東日本大震災の時は、楽団員の意思で募金活動やチャリティーコンサートも行った。主体性があっていいオーケストラだと思います」(撮影・立石祐志)

 自身もオーケストラの打楽器演奏者を目指していたという田賀浩一朗さんが、神奈川フィルの事務局で働き始めたのは2006年。「演奏家を支える仕事ができて幸せ」と笑顔で語る。

 楽団の存続が危機に陥り、ブルーダル基金を立ち上げた時のことは忘れられないという。「地域に根差した活動がいかに大事か、身をもって知った。県民の応援でオーケストラが支えられていることを、楽団員は心から感謝しています。自分たちの演奏を、その人たちに届けるんだという熱い思いが神奈川フィルの基盤です」ときっぱりと語る。「音楽を聴いただけで『雰囲気がいいオーケストラだね』と言われる理由はそこにあると思います」

 思い出深い演奏会は07年2月、シュナイトさん指揮による、リヒャルト・シュトラウス「メタモルフォーゼン」とベートーベン「交響曲第3番『英雄』」。「初めて、音楽の渦のようなものを感じた」と振り返る。「気持ちが入った時の、神奈川フィルの演奏はすさまじい。シュナイトさんをはじめとする多くの指揮者に感謝すると同時に、そんな演奏ができる団員を尊敬しています」

 SNSなどを活用し、若年層にもオーケストラの魅力をPRしている。「50周年の今年だけでなく、来年も県内各地で演奏会を企画しています。ぜひ気軽に足を運んでほしいですね」

最高の舞台作り続ける 
寺門篤之/演奏部(ステージマネジャー)


「オーケストラのフル編成よりも、バロック音楽の小編成などの方が自由度が高い分、神経を使います」(撮影・立石祐志)
「オーケストラのフル編成よりも、バロック音楽の小編成などの方が自由度が高い分、神経を使います」(撮影・立石祐志)

 演目に合わせて楽器を手配し、本番ぎりぎりまで配置を調整、当日はタイムキーパーの役割も担うステージマネジャー。年間200公演を超える同楽団の舞台を支えるこの仕事に約20年従事してきた寺門篤之さんは「ほぼ毎日、団員と一緒にいます」と笑う。

 2010年に定年制度を導入した同楽団は今、退職者の増加に伴う入れ替わりの時期を迎えている。「ここ数年、楽団員の年齢層が若返ってきて、音がかなり変わったと感じます。指揮者任せではなく、自主的に良い演奏をしようというアンサンブルの能力が高まっている。コンサートマスターが2人になり、トップ陣が充実してきたことも大きいかもしれません」。

 ちなみに「石田さんは『俺を見て付いて来い』というタイプなので配置の注文は少なく、﨑谷さんは緻密にアイコンタクトを取るので間隔が詰まった配置を好む」という。

 数センチずらすだけでも全体の響きが変化するという楽器の配置。湿度や温度で音が変わる楽器もあり、気を使う局面は多い。しかし調整を重ねることで音楽が美しくなることに手応えを感じるという。「奥行きのある横須賀芸術劇場など、会場によって条件も異なります。今年は年末の『第9』を、横浜みなとみらいホールだけでなくミューザ川崎シンフォニーホールと藤沢市民会館でも演奏するので、腕の見せどころですね」


ハンス=マルティン・シュナイト(当時首席客演指揮者)が指揮を行ったコンサート(2007年2月17日、県立音楽堂)
ハンス=マルティン・シュナイト(当時首席客演指揮者)が指揮を行ったコンサート(2007年2月17日、県立音楽堂)

歩み/history

1970年/ロリエ管弦楽団として設立

1971年/神奈川フィルハーモニー管弦楽団と名称を変更

1978年/財団法人として認可される

1983年/安藤為次教育記念財団記念賞受賞

1985年/特定公益法人として認可される

1989年/神奈川文化賞受賞

2007年/NHK地域放送文化賞受賞

2007年/横浜文化賞受賞

2010年/創立40周年を記念し神奈川県民ホールにて記念演奏会を開催

2011年/債務超過による経営難に。ブルーダル基金の募金活動を開始

2014年/寄付により債務超過を解消。公益財団法人に移行

予定(秋以降の主催公演)/schedule

定期演奏会:定/特別演奏会:特
横浜みなとみらいホール:(横)/県民ホール:(県)/県立音楽堂:(音)

【2020年】
9月5日/定「みなとみらいシリーズ第363回」(横)

9月12日/特「神奈川フィルフューチャー・コンサート秦野公演」(クアーズテック秦野カルチャーホール)

10月21日/特「神奈川フィルフューチャー・コンサート海老名公演」(海老名市文化会館大ホール)

10月31日/定「みなとみらいシリーズ第364回」(横)

11月21日/特 「創立50周年記念公演 For Future 『千人の交響曲』」(横)

12月20日/定「県民名曲シリーズ第9回」(県)

12月24日/特「交響曲第9番『合唱付き』」(横)

12月26日/特「交響曲第9番『合唱付き』」(ミューザ川崎シンフォニーホール)

12月27日/特「交響曲第9番『合唱付き』」(藤沢市民会館)

【2021年】
1月23日/定「音楽堂シリーズ第18回」(音)

1月30日/特「神奈川フィルフューチャー・コンサート小田原公演」(小田原市民会館)

2月6日/定「みなとみらいシリーズ第365回」(相模女子大学グリーンホール)

2月20日/定「音楽堂シリーズ第19回」(音)

3月6日/定「みなとみらいシリーズ第366回」(鎌倉芸術館)

3月20日/定「県民名曲シリーズ第10回」(県)

3月27日/特「神奈川フィルフューチャー・コンサート大和公演」
     (大和市文化創造拠点シリウス やまと芸術文化ホール)

問い合わせ 神奈川フィル・チケットサービス ☎ 045(226)5107
*新型コロナウイルス感染拡大を受けて日程が変更になる可能性があります


50周年のロゴマーク
50周年のロゴマーク

♪楽団プロフィル

 「県内の音楽文化創造」を使命として活動を展開するプロオーケストラ。定期演奏会など年間200回以上の演奏会を開催し、オペラ、バレエ公演などにも数多く出演。また「ヨコハマ・ポップス・オーケストラ」として映画音楽、ミュージカル、アメリカン・ポップスを演奏するなど、ジャンルを超えた幅広い音楽に挑戦している。近年は、映像配信やSNS(会員制交流サイト)などの新しい媒体を活用した情報発信を積極的に行い、若年層へのアプローチにも注力している。

理事長/上野 孝
副理事長/上野 健彦
専務理事/櫻井 龍一
音楽主幹/榊原 徹
常任指揮者/川瀬 賢太郎
特別客演指揮者/小泉 和裕
名誉指揮者/現田 茂夫
桂冠芸術顧問/團 伊玖磨
桂冠指揮者/山田 一雄
首席ソロ・コンサートマスター/
石田 泰尚
ソロ・コンサートマスター/﨑谷 直人
(敬称略)

楽員/65人(契約団員を除く)

定期演奏会場/横浜みなとみらいホール(横浜市西区)、県立音楽堂(同中区)、県民ホール(同)

【ホームページ】kanaphil.or.jp
【Facebook】https://www.facebook.com/kanaphil
【Twitter】@kanagawaphil
【Instagram】kanagawaphil

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