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横浜市在住の絵本作家・東郷なりささん
桜の表情を彩り豊かに表現 絵本「さくらがさくと」

文化 | 神奈川新聞 | 2020年3月27日(金) 19:48


 横浜市戸塚区に住む絵本作家東郷なりささん(32)が、桜の表情を彩り豊かに表現した絵本「さくらがさくと」(福音館書店、1540円=写真上)を出版した。構想からおよそ4年。柔らかな春の訪れを感じさせる本書は、作者の自然への思いが詰まっている。

 3~4月の桜並木。道行く人が花のかれんさを目にしようと足を止める。メジロやヒヨドリが蜜を吸いにやって来て、週末には桜の下でお祭りも。自然と人々が織りなす春のひとときが、温かなタッチで描かれる。

 「自然にあまり興味がなくても桜に引かれる人は多い。桜を通じて、生き物や植物により関心を持ってもらえたら」。東郷さんが創作の狙いを語る。


「実物のものを忠実に描きつつ、写真のようにリアルにし過ぎない。そのバランスを大事にしています」と話す東郷なりささん=横浜市戸塚区
「実物のものを忠実に描きつつ、写真のようにリアルにし過ぎない。そのバランスを大事にしています」と話す東郷なりささん=横浜市戸塚区

 「ピンク色の天井」や「辺り一面のピンクのじゅうたん」など、淡いピンクを基調とした美しい色彩が広がる本書は、網とブラシを使った「スパッタリング技法」と呼ばれる技術で描かれた。

 「網に水気のある絵の具を載せてブラシでこすり、絵の具をミスト状に飛ばします」と東郷さん。幻想的な描写の秘密はこの手法にあった。

 日本画用の岩絵の具を簡易化した「顔彩(がんさい)」を使っているのも特徴。葉の緑や木の幹など、水彩絵の具では表せない独特の発色と深みで風情を漂わせている。

 2016年夏に構成を練り始め、横浜の大岡川沿いの桜並木などを丹念に取材してきた。花が咲く前の様子や葉桜を観察したほか、同じ枝を二日おきにじかに確認。絵本では、つぼみがほころび花びらが開くまでを描いたこまやかな表現に触れられる。

 「絵本と現実をつなぐ作品になってほしい」と東郷さんは話す。「この本を読んで実際に桜の花を見に行ってほしいし、その後にまたこの本を開いてほしい」。本と実生活の世界を行き来するような、そんな一冊となることを願う。

 自身の6作目となる本書だが、これまでも自然や鳥をテーマに作品を創ってきた。中学生の頃からバードウオッチングに夢中になり、大学では生態学を専攻。英国の大学院で絵本の挿絵を学び、26歳の頃、スイスの出版社から絵本作家としてデビューした。


日頃から鳥をスケッチしている
日頃から鳥をスケッチしている

 自然を身近に感じてもらうのが何よりの喜びだ。正面から花をつついて花粉で顔が黄色くなったヒヨドリや、花を丸ごと摘んで地面に落とすスズメなど、作中には鳥の種類ごとの行動もさりげなく映し出す。

 「例えば絵本で見たこうした光景を実際に外で目にしたら、子どもたちはきっと『本と同じだ』と喜ぶ。子どもの頃から豊かな自然に触れられる、そんなきっかけを絵本で提供したい」

 刊行されたタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題に。外出をためらい鬱々(うつうつ)とした毎日を送る読者から、「家の中でもお花見をした気分になれた」との感想が届いた。

 こんな時だからこそ、多くの人に春の風を感じられる本書を届けたいと思う。「子どもたちはもちろん、なかなか外に出られずにいるお年寄りなど、全ての人に楽しんでもらえたらうれしいです」

 絵本の制作過程を語る東郷さんのトークイベント(参加費千円)を4月25日に横浜市南図書館(南区)で開催予定。また、本書の原画展(無料)を絵本店「子どもの本& クーベルチップ」(同区)で4月12日まで開催中(月~水曜休み)。問い合わせは同店TEL045(334)8702。

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