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ポーラ美術館/「シュルレアリスムと絵画」展
フランスで誕生の美術思想 日本定着の変遷をたどる

文化 | 神奈川新聞 | 2020年3月9日(月) 15:35

日本のシュールレアリスム作品が並ぶ一角
日本のシュールレアリスム作品が並ぶ一角

 約100年前にフランスで誕生した美術思想「シュールレアリスム」が、日本でどのように定着したのかをたどる「シュルレアリスムと絵画」展が、ポーラ美術館(箱根町)で開催中だ。本来の意味を離れ、“超現実主義”として日本独自に浸透した変遷を約100点の油彩画や版画、コラージュで紹介している。

 シュールレアリスムを縮めて使われるようになった日本語の「シュール」は、「現実離れしている」という幻想的な意味合いが強い。日本でのシュールレアリスム芸術も同じような意味で使われるようになった。

 だが、フランスで生まれたシュールレアリスムの本来の意味は異なる。1914年に起こった第1次世界大戦は、近代化が進む一方で科学や理性が人類を滅ぼしかねない、と近代を否定する考え方をもたらした。

 戦場で悲惨な現実を目の当たりにした詩人のアンドレ・ブルトンは、理性にとらわれないもの、無意識の中から勝手に出てくるものに意味を見いだし、これを“超現実”と呼んだ。現実の中にあるが理性では到達できないものを求めた。


エルンストのフロッタージュ作品を拡大。瞳を通して奥に並ぶ作品が見える=ポーラ美術館
エルンストのフロッタージュ作品を拡大。瞳を通して奥に並ぶ作品が見える=ポーラ美術館

 半ば眠っている状態で書くオートマティスム(自動筆記)や葉や石などを紙に当てて模様を写し取るフロッタージュといった実験的な技法が19年に出現。偶然の中から生まれた線や模様に何を見いだすのかが重要だと考えられた。

 マックス・エルンストは別々の雑誌の挿絵を1枚の絵の中に貼り合わせて物語を作り出すコラージュの技法により、シュールレアリスムを実践した。

 日本でシュールレアリスムが盛んになるのは30年代だが、思想というより表面的な捉え方だった。

 当時、日本のシュールレアリスムを代表する画家とされた古賀春江だが、代表作「海」(同展には出品されない)に描いたのは水着姿のモダンガールや飛行船、潜水艦といった最先端の機械科学。組み合わせは奇抜だが、同館の東海林洋学芸員は「近代を賛美する視点であり、近代を否定したシュールレアリスムの考え方とは真逆」と指摘する。

 こうしたねじれ現象が起こったのは、サルバドール・ダリの影響が大きい。米国で活躍していたダリは、奇抜な画風からシュールレアリスムの画家として知られていた。ブルトンらと活動を共にしたこともあったが、奇抜なものを描くのがシュールレアリスムの狙いではなく、正確には立場が異なる。

 美術評論家で詩人の滝口修造はブルトンと書簡を交わし、本来のシュールレアリスムを紹介しようと奮闘したが、あまり広まらなかった。

 現代は「シュール」が多様性にあふれ、定義しにくいという。会場には現代美術家の束芋(たばいも)の作品が並ぶ。東海林学芸員は「浮世絵の影響があり、漫画やアニメの特徴に近いところもある。いろんな要素を受け継いでいる作家。ナンセンスな点ではシュールレアリスムだ」と話した。

 4月5日まで。一般1800円ほか。問い合わせは同館☎0460(84)2111。

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