新年を迎えるための形はいろいろ。多様な考え方が広がっています。
【2019年12月15日紙面掲載】
師走も半ばを過ぎて、いよいよ今年も年の瀬へと向かう道すがら。一昔前に比べればお正月の支度も、他の行事と同じように簡素化されてきたせいか、一般的といわれている決まり事だけが広がっているように思います。
たとえばお正月の“十三日の煤(すす)払い”。私が使っている暦では12月13日とあります。お正月の支度をはじめる日で、煤払いをしたり、門松などお正月飾りに使う松を山に採りにいく松迎えなどをする日とされています。ところが、昭和の各地の民俗誌などを読んでみると、煤払い一つとっても20日前後に行ったなどとあり、一様ではなかったとわかります。
ご年配の方の話に耳を傾けたり、こうした資料をたどればたどるほど、決まり事というものの正体に目を向けることになります。
社会や文化のかたちは変わりゆくものという従来の普遍的な流れに加え、ここ10年ほどのテクノロジ-の進化は世の中の変化をすさまじいものにしています。
こうした中ではあらためて、さまざまな時代や地域、また家々に見られたお正月飾りのスタイルや決まり事の見事なほど「多様なかたち」にもう少し目を向け楽しむことで、人々が何にまなざしを向け、何を慈しんできたのか、おぼろげながらも見えてくるのではないかと思っています。