1月4日、横浜にぎわい座(横浜市中区)で、日本の伝統芸などを集めた公演「新春特選 ニッポンの芸!」=写真上=が開催される。獅子舞や万歳のほか、漫談やものまねなども登場し、家族で初笑いができる企画だ。トリを務めるのは「水戸大神楽」を継承する柳貴家正楽社中。当日、芸を披露する柳貴(やなぎ)家(や)雪之介(ゆきのすけ)に、太神楽への思いを聞いた。
以前は地域ごとにあったという太神楽だが、現在は水戸、江戸、伊勢の3流派のみが活動を続けている。獅子舞によって悪霊をはらい、曲芸も演じる芸能だが、もともとは神前で鎮魂とおはらいなどを行う神事だった。
柳貴家正楽社中も水戸藩お抱えの太神楽として活躍、歴史ある芸を継承してきた。獅子舞のほか、傘の上でマスなどを回すおなじみの芸も演じるが、特徴的なのは本物の出刃包丁を縦に重ね、その上に皿を載せてバランスをとる技だ。
「外国人の方には『クレージー』と言われたりもしますが、自分の得意技で、とても盛り上がる芸。4日の公演でも披露する予定です」と雪之介。
父親でもある柳貴家正楽に3歳で師事し、子どもの頃から稽古漬けの日々を送ってきた雪之介のポリシーは「美しく繊細であること」。決めポーズの指先にまで意識を向けたスマートなパフォーマンスが印象的だ。太神楽と言えば、海老一染之助・染太郎のようなにぎやかな芸のイメージもあるが「僕はさらっと芸を披露していきたい」と話す。出刃包丁を使った芸ができるようになるまでには10年以上の年月がかかるというが「淡々と技を決めていくので、簡単そうに見えてしまうらしいのが悩みです」と笑う。
普段は落語会やイベントなどでパフォーマンスを披露。近年は学校の芸術鑑賞会に呼ばれることも増えてきたという。今年は横浜にぎわい座で小中学生向けのワークショップも行った。「ビニール傘の上に紙風船を載せて回したり、手拭いを折って鼻の上に立てたりする技を練習したのですが、子どもたちだけでなく保護者の方も楽しんでくれてうれしかったです」
芸能人主催のプライベートなパーティーなど、活躍の場は広がりつつあるが、課題もあるという。「太神楽だけでなく紙切りや曲独楽(こま)など、寄席で落語の合間に演じられる『色物』は単体での公演が難しいほか、一子相伝で継承されることも多く、なかなか広がりがない。今回のような公演を企画して下さる横浜にぎわい座さんには感謝しています」
今後は、海外での公演や動画でのPRにも挑戦していきたいと意欲を見せる。「落語や講談がブームになっている今、太神楽にも興味を持ってもらえるような情報発信ができないか、模索しています」
「新春特選 ニッポンの芸!」は1月4日、午前11時半開演。全席指定、一般3200円など。
チケットは横浜にぎわい座☎045(231)2515。