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都内出版社がクラウドファンディング
スペイン発の小説「ぼくの血に流れる氷」日本語版の刊行を

文化 | 神奈川新聞 | 2022年8月2日(火) 13:58

「PRIDE叢書(そうしょ)」シリーズとしてサウザンブックス社が翻訳出版してきた書籍の一部

 「ぼくはゲイ『なんか』じゃない」。同性愛者である事実を受け入れられない少年の苦悩を描いたスペイン発の小説を邦訳しようと、都内の出版社がクラウドファンディング(CF)で支援を募っている。周囲との違いに戸惑い、自らを否定する性的少数者の若者を救う一冊となることを期待し、日本語版の刊行を目指している。

 小説は「ぼくの血に流れる氷」(マイク・ライトウッド作、2017年)。同性に恋心を寄せていることを周囲に知られ、過酷ないじめを受ける少年オスカルが主人公の「ぼくを燃やす炎」の続編だ。

 「ぼくの血に─」はオスカルの親友ダリオの視点で語られる。スペインの保守的な田舎町に暮らす16歳。彼が、オスカルがゲイだと同意なくばらした張本人だった。自身も同性に引かれながらその事実を認められない。自分と周囲を傷つけ、孤独と罪の意識にさいなまれるも、生き方を変えようと一歩踏み出す姿が描かれる。

「ぼくの血に流れる氷」(2017年スペイン発行)

 「自身の性のありようを受け入れられず、うまく自己肯定できないゲイ少年の復活劇」だと、翻訳出版を手がけるサウザンブックス社(東京)代表の古賀一孝さん。「ぼくを燃やす炎」をはじめ性的少数者をテーマにした翻訳本を10冊近く刊行してきた。「ぼくの血に─」の登場人物の苦しみに共感する読者にも、必ず理解者がいること、未来に希望が持てることを伝えたいという。同書は若い当事者の声を基に書かれており、「『うまく自己肯定できない』部分に救われる読者が多いと思う」と語る。

 ゲイ男性が内に抱える同性愛嫌悪をリアルに描写する本書は、日本に暮らす当事者にも共通する普遍性がある。

 自治体が同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度の広がりをはじめ、性的少数者を取り巻く環境は少しずつ前進しているが、婚姻の平等や差別禁止の法整備は進まず、同性愛者やトランスジェンダーを侮辱する国会議員らによる差別発言が後を絶たない。

 「性的少数者を『例外』とみなし、その人権の保障を後回しにする社会があるからこそ、当事者は嫌悪を内在化させられている」と古賀さんは指摘する。

「自己肯定できない性的少数者が、生きる力を持てるような書籍を今後も刊行していきたい」と話す古賀一孝さん

「自己を肯定できないのは自身の弱さや欠落のせいではない。社会的な背景が影響しているというメッセージも本書に託したい」

 本の力で居場所を必要とする性的少数者の若者に寄り添うことを願いつつ、当事者以外にも本書を届けたいと話す。「物語に触れることで性的少数者をより身近に感じてほしい。ご近所さんのお話として読んでもらえたらうれしいです」

 2022年8月8日まで支援を受け付け中。詳細は同社のウェブサイトで。

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