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作家・佐藤多佳子さんに聞く創作への思い

文化・科学 | 神奈川新聞 | 2022年3月22日(火) 16:54

photo/森 清
「いつの空にも星が出ていた」1760円、講談社

 いよいよ4月1日から「神奈川文芸賞2022」の作品受け付けが始まる。県内を舞台にした作品を多く発表している作家の佐藤多佳子さんに、取材時のエピソードや創作への思いを聞いた。

─作家をめざすきっかけとなった出来事はありますか。

 「子どもの頃から読書している時間が一番楽しかったし、読むことと書くことは私にとって表裏一体でした。中学1年の夏、3歳年下のいとこと一緒にアストリッド・リンドグレーンの『わたしたちの島で』という本に夢中になり、自分たちがこの島で暮らしていたら…という二次創作を書いて楽しんでいたことも創作のひとつの原点かもしれません」

「一瞬の風になれ」講談社文庫。「第一部 -イチニツイテ-」660円

 「大学卒業後、会社勤めが性に合わず退社し、両親に1年間の猶予をもらってさまざまな文学賞に応募しました。そこで第10回月刊MOE童話大賞を受賞したことが転機になりました」

─作品を執筆する時のこだわりはありますか。

 「物語という『大きなうそ』を仕上げるために『小さなうそ』をつかないということです。ちょっとしたリアリティーを損ねてしまうと読者が作品を信じられなくなる。都合良く登場人物たちを動かさないことを心がけています」

 「私にとっては、自分が主人公と一緒にその場所に立って生きている感覚がとても大切なので、なるべく取材をするようにしています」

「一瞬の風になれ」講談社文庫。「第二部 -ヨウイ-」704円

─取材時の思い出を教えてください。

 「陸上競技に取り組む高校生たちを描いた『一瞬の風になれ』では、相模原市南区の県立麻溝台高校陸上部を4年近く取材しました。部員の皆さんや、情熱を持ったコーチの先生に出会えたことは幸運でした。横浜を舞台にした『いつの空にも星が出ていた』もそうですが、取材で出会った皆さんと一緒に書いた作品だという思いがあります」

─創作のためのアドバイスはありますか。

 「物語を書くためにはいろいろな本を読むことが大切です。大学の児童文学サークルで指導をして下さった神宮輝夫先生からは、多様な作品に触れて世界を広げる大事さを学びました」

「一瞬の風になれ」講談社文庫。「第三部 -ドン-」902円

 「文章を磨くには好きな作品を読み込むことがおすすめです。好きな作家の文章を繰り返し読み、リズムや文章の感覚を自分に染みこませていくと強い土台になります。印象的な景色に出合った時に、頭の中で描写をしてみることも良い訓練になります」

─文芸創作に取り組む若者たちへのメッセージをお願いします。

 「自分の作品をマンガや映像作品にしてもらった経験から思うことは、せりふの文字数や上映時間に制限がない小説は、逆に情報量の多い世界だということです。言葉を尽くして登場人物の心情を伝え、読者を作品に引きこむことができる。文字だけで世界を創造する楽しさを感じてほしいです」(談)

さとう・たかこ 作家。1962年東京都生まれ。青山学院大学卒業。89年「サマータイム」で第10回月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。2007年「一瞬の風になれ」で第4回本屋大賞と第28回吉川英治文学新人賞を受賞した。17年には金沢八景を舞台にした「明るい夜に出かけて」で第30回山本周五郎賞を受賞。プロ野球横浜DeNAベイスターズのファンで、「いつの空にも星が出ていた」(20年)ではベイスターズを愛してやまない人々の物語を描いた。


作品受け付け6月末まで

 神奈川新聞社では今年「神奈川文芸賞」を創設しました。初回となる「神奈川文芸賞2022」の作品を4月1日から6月末まで受け付けます。部門は「短編小説」「現代詩」で、審査員はそれぞれ小説家の朝井リョウさんと立教大学教授で詩人の蜂飼耳さんが務めます。

 今回は、上記2部門に加え、25歳以下を対象とした「U─25部門」を特設します。三題噺(さんだいばなし)形式で創作に取り組んでいただく同部門は本紙読者らによる審査を行います。

【短編小説部門】
400字詰め原稿用紙29~30枚/1人1編/賞金は大賞1編30万円、準大賞2編各10万円/神奈川の文化・歴史などに取材した作品、神奈川が舞台となった作品。ジャンル不問/年齢・居住地不問
審査員◆朝井リョウ

【現代詩部門】
1編40行(400字詰め原稿用紙2枚)以内/1人2編(1編のみは無効)/賞金は大賞1編10万円、準大賞2編各3万円/1編は神奈川に関連した作品、もう1編は自由テーマ/年齢・居住地不問
審査員◆蜂飼耳

【U―25部門】
400字詰め原稿用紙9~10枚/1人1編/賞金は最優秀賞1編10万円、三菱地所横浜支店賞(1編)3万円+ロイヤルパークホテルズ ギフト券5万円分(予定)/「ランドマーク」「海」「翼」を使った青春小説/居住地不問/2022年4月1日現在で25歳以下であること ※本紙読者らによる審査を行います

【発表・その他】
選考結果は2023年1月上旬に神奈川新聞本紙およびホームページで発表/入賞者には別途通知/審査過程の問い合わせには応じません/入賞作品は本紙に掲載。氏名および住所の一部を発表時に公表します/表彰式は2023年3月ごろ横浜市内で開催予定。詳細は神奈川新聞本紙およびホームページで発表する予定です。
応募要項など詳しい情報は下記QRコードから公式ホームページをご覧ください。

【問い合わせ】
神奈川文芸賞事務局(神奈川新聞社文化部内)電話045(227)0200=平日午前11時~午後5時

主催:神奈川新聞社
特別協賛:三菱地所横浜支店
協賛:神奈川中央交通、日本たばこ産業神奈川支社
後援:神奈川県、横浜市、神奈川県教育委員会、横浜市教育委員会、県立神奈川近代文学館

 
 

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