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タブレット純のかながわ昭和歌謡波止場(12)
平山三紀◆「ビューティフル・ヨコハマ」

文化 | 神奈川新聞 | 2022年1月7日(金) 12:14

【2021年12月5日紙面掲載】

 10月、「筒美京平マイ・コレクション」として、自分もお世話になっているコロムビアレコード編の選曲を担当させていただきました。しかし、筒美先生ごめんなさいといいますか、かなりしょぼんとしたラインアップに…。好きな食べ物がみつばのおひたしなぼくは、音楽嗜好(しこう)も総じて侘(わ)び寂(さ)び漂う傾向にありまして、センチメンタルなひとり酒のBGMとしては自信があるのですが、筒美サウンドの核にはあまり触れられていないラインアップになってしまったかと反省しております。

作詞/橋本淳・作曲/筒美京平

 そんなお詫(わ)びもちょっぴり込めて、今回は筒美エッセンスの集大成、真骨頂との声も名高い「ビューティフル・ヨコハマ」(1970年・昭和45年)と相成りました。この曲は「ブルーライト・ヨコハマ」の続編たるコンセプトでつくられた、と作詞の橋本淳さんは語られているのですが、あの“小舟のように”心もとなく歩いていたあの主人公の少女が、こんなふうに“脱皮”し羽ばたいてしまったのであれば何ともショッキング! いわば“都会的な、遊び人の女性”が描かれ、舞台も前者が港の見える丘公園の夜景というロマンチックなイメージから、土着性溢(あふ)れる本牧へ。サウンドも前者のエレガントなチェンバロからファンキーなホーンセクションへと様変わりしています。

 橋本さんは、「筒美さんは彼女のようなドライブのかかった声が好きなんですよ」と証言されていますが、なるほど。平山三紀(現・平山みき)さんの声にはどこか“ハンドルの遊び”があるような。英語の真意を履き違えているかもなのですが、少なくともペーパードライバーなぼくには到底歌いこなせない世界観です。ビブラートで感情を過多にしてしまうのが歌い手としてのぼくの自覚的悪癖なのですが、平山さんはストレートに淡々と歌いながら扇情が波打っているといいますか。

横浜市中区・本牧の繁華街(1974年、神奈川新聞社撮影)

 そうか、よくよく聴けばこの主人公は、いろんな冒険はしても、好きな男は港で船を見てる彼一人だけ。やさぐれているようで純情。それが平山さんの歌声の唯一無二の魅力なのではないでしょうか。下積み時代は、音楽学校で同期だった、のちにトワ・エ・モアでブレークする白鳥英美子さんとデュオをされていたこともあるとか、一体どんなハーモニーが成されていたのでしょうか? いま喫茶店で想像していたら、ふとカフェモカにタバスコを垂らしてしまいました…。

絵/タブレット純

 決して怒ったり、感情を表には出さない筒美さんから、平山さんが最も影響を受けた教えは「普通の感覚を持っていなさい」だったとか。元の筆名「鼓響平」に“鼓が平らに響くように”の願いを込めていた筒美さんの音楽にはアバンギャルドであれ平和性が根本にあります。それが庶民の歌であり歌謡曲なのだから。

 一方で平山さん、橋本さんには怒鳴られてばかりいて泣かされ、ごねて「帰る!」となったこともあったそうですが、それは“感情が高ぶることが、泣くことが歌に生かされる”という裏の教えによるものと後年知ることに。「今ではいい思い出ですけどね」と振り返り笑う平山さんの私服は、今もラッキーカラーの黄色がお似合いです。ビューティフルなお話ね!

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