現在11人が所属する県立光陵高校(横浜市保土ケ谷区)文芸部。短歌に集中して取り組み、8月に「第6回高校生万葉短歌バトルin高岡」(富山県)、「第11回牧水・短歌甲子園」(宮崎県)の両大会で本選に出場し、前者では優秀賞も獲得するなど快進撃が続く。青春の一こまを31文字で切り取る表現に魅了された部員たちに、短歌の魅力を聞いた。
大学時代から短歌の研究・創作を行っていた宮﨑哲生先生がメインの顧問になったのは2020年。先生による丁寧な添削と毎週開催する歌会(批評会)により、部員たちはすぐにその才能を発揮しはじめた。
同年12月「第2回万葉の郷とっとりけん全国高校生短歌大会」では全国242チームの中から本選大会に出場する8チームに選出。チームとしては1回戦で敗れたものの、部長の小野愛加さん(2年)が審査員特別賞としての「江戸雪賞」、山田千鶴さん(同)も同じく「穂村弘賞」を獲得した。
小野さんの作品は「私かて家族に内緒で泣いてるよ絡まったままイヤホンつけて」。山田さんの作品は「黄昏の浜に別れを告げた時光押し出す波が見えたの」。いずれもみずみずしい感性が光る秀作だ。
今月7日に開催された第3回の同大会では、チームとして準優勝とパフォーマンス特別賞を勝ち取った。
この部活で初めて短歌に接した部員も多いというが、もともと読書や創作が好きだったという森葵唯さん(同)、栗原幸希さん(同)、藤井渚央さん(1年)のような部員だけでなく「活字が苦手だった」という小熊里梨さん(2年)も、仲間と共に表現を磨くことを楽しんでいるという。
「先生のアドバイスや、仲間から受ける刺激でモチベーション高く取り組めています」と小野さん。「憧れの歌人である穂村さんから評価してもらえたことは宝物」と話す山田さんは「写真みたいにその瞬間の景色を残しておける、面白い表現形式です」と短歌の魅力を語る。
兼部している弦楽部ではビオラを演奏しているという髙橋愛花さん(同)が「音楽をやっているので、文字数が合わなくても自然に聞こえる言葉を選べているかもしれません」とはにかむと「作品には部員の個性や人間性がにじんでいるし、自分を知ることにもつながります」と三品陽成さん(同)も声を合わせた。
藤崎真子さん(同)が「短歌を作ることで、うまく言えない気持ちも整理できる。他の人の作品を味わう楽しみも感じられるようになりました」と言うと全員がうなずいた。「部員たちの短歌を読むことができることがうれしいんです」と笑顔を見せる宮﨑先生の熱意が、部員たちの飛躍に結実しているようだ。
心の動き、短歌で切り取る 県立光陵高校文芸部
前列左から森さん、山田さん、小野さん、藤崎さん、髙橋さん、後列左から三品さん、栗原さん、小熊さん、藤井さん、宮﨑先生 [写真番号:910145]
年4回を目標に制作している部誌では小説執筆に挑戦する部員も [写真番号:910146]