昨年からのコロナ禍で、ビデオ会議システムなどオンラインでのコミュニケーションが一気に普及した。県内大学の文芸サークルも、あらゆるオンラインツールを駆使した活動を展開。仲間に刺激を受けながら、それぞれが表現の幅を広げている。
◆手芸と合同で
相模女子大学(相模原市南区)の創芸部は文芸と手芸を楽しむ学生が集まったサークル。所属する21人のうち、両方を手掛ける部員もいるという。部長の川瀬はる美さん(栄養科学部・2年)は、「今は11月3、4日にオンラインで開催される文化祭に向けた作品を制作していますが、いずれは文芸作品と手芸作品の画像をまとめた冊子を作りたいです」と部員に期待を寄せる。
文芸創作に取り組む部員たちは月1回ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使い、60~90分の制限時間を定めて小説を書くトレーニングを行っている。執筆した作品は無料通信アプリLINE(ライン)で共有、お互いに感想を述べることで技術向上につなげているという。「同じテーマで執筆しても、展開や書き出しがみんな異なるのでいつも勉強になります」と語るのは舩橋麗名さん(同1年)。長編ファンタジー作品の執筆に取り組んでいる佐藤深琴さん(人間社会学部・1年)も「他の人の会話文や細かい描写が参考になります」と明かす。
仲間との共作にも挑戦したい、と話すのは1年の高橋美妃さん(学芸学部)。「それぞれ1話ずつを担当して、連続した物語づくりができたら面白そう」と夢は広がる。矢木月菜さん(同2年)も「小説だけでなく短歌を作ることも好きなので、いつかみんなで歌会をやってみたいですね」と充実した表情を見せた。

◆作品の販売も
横浜国立大学(横浜市保土ケ谷区)の文芸サークル「伽藍(がらん)堂」のメンバーは13人。オンラインを積極的に活用したサークル活動を行っている。Zoomを利用して毎週2回の情報交換と2カ月に1回の批評会を開催。大学祭などのイベント開催が難しい今は会員制交流サイト(SNS)などを使ってメンバーの作品を公開・販売している。Twitterの文字数である140文字以内で、3つのモチーフを使って物語を創作する「三題噺(さんだいばなし)」に挑戦する取り組みもユニークだ。
「サークルでは短編を書くことがほとんどですが、個人的には小説投稿サイトなども利用して連載小説を公開しています」と語るのはサークル長の野々山佳祐さん(経済学部3年)。趣味で作曲も行うという杉原健吾さん(理工学部3年)は「表現することが好き。卒業後も、自分の思いをいろいろな形にしていきたいですね」と創作への思いを明かす。
個性豊かな仲間と技術を磨き合える場に身を置くことで「なじみのないジャンルにも触れ、視野が広がった」と話すのは同大大学院環境情報学府1年の伊本咲矢さん。「以前から創作を続けていましたが、サークルに入ったことで文章のレベルアップができました」と手応えを語る。「文芸作品の感想を共有したくて」参加したという吉川拓志さん(理工学部3年)も「自分が創作に挑戦したことで、小説の細かいディティールも深く味わえるようになった」とサークルで得たものを振り返った。
相模女子大・横浜国大の文芸サークル オンラインで活動共有
[左から]舩橋麗名さん、矢木月菜さん、川瀬はる美さん、佐藤深琴さん、高橋美妃さん=相模女子大学 [写真番号:829361]
「伽藍堂」オンラインミーティングの様子。左上から時計回りに(大学院)都市イノベーション学府1年・小室りささん、杉原健吾さん、野々山佳祐さん、(大学院)伊本咲矢さん、理工学部4年・富永宇さん、理工学部1年・荒井成泉さん [写真番号:829362]