1人でこつこつ取り組むことの多い文芸創作。有志によるサークル活動は、お互いの作品を評価し、技術を磨き合える貴重な場だ。県内大学で創作に取り組む学生たちは、オンラインで仲間とコミュニケーションを取りながらモチベーションを高めている。
◆ 批評会に刺激
11人が所属する鶴見大学の文芸部では年4回、各自の作品を掲載した部誌を発行。毎号、作品についての批評会を行っている。コロナ禍で大学に集まるのが難しい今は無料通信アプリ「LINE」などを活用。時折り厳しい指摘も飛び交う批評会は緊張感が漂うが、確実に部員の技術向上につながっているという。
「先輩たちの批評は鋭いので、いつもプレッシャーでおなかが痛くなるくらいでした」と笑うのは部長を務める上田勇輝さん(文学部3年)。「もともと小説を書くのが好きで、作家になるのが夢。大学の授業はもちろん、仲間に作品を読んでもらえる部活動はとても勉強になります」と充実した表情を見せる。
部誌に掲載するのは純文学作品が中心。巻頭には必ず詩を配置するなど、編集会議にも時間をかけている。「年4回の部誌とは別に、卒業する先輩たちに贈呈するための冊子も作っている。そちらは自由度が高いので各自の趣味が色濃く出ていて面白いです」
大学では日本の近代文学にまつわる講義を集中的に受講しているという上田さん。自身の創作では、日本のミュージシャンの歌詞や日常の出来事に着想を得ることが多いという。部誌のための作品執筆では、章ごとの文章量のバランスを取ることが現在の課題だ。
今後書いていきたいのは直球の人間ドラマ。「重松清さんのように、平易な言葉を重ねながらも心にずしんと響く作品を書いていきたいですね」
◆学外でも挑戦
現在4人の部員で活動する横浜市立大学文芸部。少人数だが、それぞれの創作活動は部内だけにとどまらず学外にも広がっている。
「子どもの頃からファンタジー作品が好きで、お話をつくることが趣味だった」という国際教養学部2年の筒井日菜さん。小説を書くだけでなく、学外の仲間たちと制作中の、子ども向けアニメ作品の脚本も手掛けている。「小説とは違い、作画や音楽担当者と相談しながら自分の思いを脚本に込めるのは難しいですが、やりがいがある。卒業後は創作を仕事にしていけたら」と声を弾ませる。
同部3年の木場紗弥さんは昨年から、コロナ禍で感じたもどかしい気持ちを短歌に昇華。模索しながらつかんだ新たな手法に手応えを感じ、新聞や雑誌への投稿のほか、文芸コンクールにも挑戦したという。「人生は楽しいことばかりじゃない。作品を作ることで、苦しんだり悩んだりした時間も冷静に受け止められるようになった気がします」
現在は、今秋に部誌を発行できるよう準備中。毎月1回はオンラインで顔を合わせ、制作状況を共有している。最近読んだ本について情報交換することもあり、最近の話題作だけでなく遠藤周作や太宰治らの作品も話題にのぼるという。
「明治や昭和の文豪が残した作品を読むことも創作の糧になります」と木場さん。無頼派の作品が好きだという筒井さんも「文芸部の先輩たちとの交流を、自分の学びにつなげていきたい」と声を合わせた。
学生有志によるサークル活動 交流を学びの場に
上田勇輝さん=鶴見大学 [写真番号:820585]
筒井日菜さん(左)と木場紗弥さん=横浜市立大学 [写真番号:820599]