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馬の博物館特別展「サムライアーマー」
室町後期~江戸前期の甲冑、武具など一堂に展示

文化・科学 | 神奈川新聞 | 2021年7月26日(月) 16:17

在来馬を復元した模型に、甲冑をまとった武将の姿は迫力がある=馬の博物館

 主に室町時代後期から江戸時代前期に使われた甲冑(かっちゅう)や武具など54点を一堂に集め展示する特別展「サムライアーマー」が、馬の博物館(横浜市中区)で開かれている。日本甲冑武具研究保存会(東京都新宿区)との共催。

 金工、漆工、彫金、皮革加工、染め織りといった展示品の9割が会員らのコレクションで大半が未公開品だ。日本の伝統技術が集結した美術工芸品ともいえる貴重な資料を間近にできる。

 会場中央に配置された、在来馬を復元した模型にまたがる甲冑をまとう戦国武将の姿が目に留まる。金澤真嗣学芸員は「古い屏風(びょうぶ)や絵巻物に描かれた馬は木曽馬や、すでに絶滅した南部馬など日本に昔からいた在来種です。この復元模型は鎌倉の材木座で出土した1330年代の馬骨などを参考に体高を復元しました」と解説。馬装は当時の姿を再現したいと、古式馬術に精通する人に依頼。ひもの結び方や着装する順序などにもこだわったという。

「黒韋威肩白腹巻 大袖付」(室町時代初期 個人蔵)

 同館が所蔵する馬鎧(うまよろい)一式は、攻撃から守るために馬が装着した馬鎧や、馬の頭部を保護する馬面、鞍(くら)は安土桃山時代に制作されたもので、蒔絵(まきえ)で橋や柳の葉が描かれている。室町時代初期の「黒韋威肩白腹巻(くろかわおどしかたしろはらまき) 大袖付(おおそでつき)」は甲冑の基本形。小札(こざね)と呼ばれる短冊状の鉄板鉄に黒漆を塗り約3千枚重ね、糸で縫い合わせた。糸も当時の状態で残っている貴重な遺品だ。

 室町時代後期ごろに下級武士や足軽が使った簡素な腹巻は牛革製で軽くて動きやすく、「刀で刺しても絶対に切れない」と金澤学芸員。

 一方、鉄砲の普及など戦い方の変化に合わせて、総重量が約35キロから約10キロへと軽量化した。江戸時代に近づくと、さらに実戦的なものから権威を示すため意匠を凝らした装飾を重視する傾向が強まってくる。龍(りゅう)のような脇立(わきたて)がある兜(かぶと)や、剣術の神と称された烏天狗(からすてんぐ)を模した胴前など、デザイン性に富んだものが増す。

大倉幕府周辺遺跡群出土の鉄製籠手(室町時代、鎌倉市教育委員会所蔵)

 鎌倉の大倉幕府周辺遺跡群から出土した鎖籠手(こて)も見どころの一つだ。鎧の左腕部分を覆い、一つの輪に四つの輪が組まれた八重鎖(やえぐさり)という技法で作られた。柏﨑諒学芸員は「八重鎖は室町時代末期から現れた西洋渡来の南蛮鎖と呼ばれる形式の一種で、鎌倉には高い技術を持つ職人がいたことを裏付けられる」と説明。籠手の出土は全国的にも希少だという。

 「甲冑は防具としてではなく、美術工芸作品としてデザインや高水準の皮革加工や染色技術による機能美、造形美を鑑賞するのも楽しみの一つです。日本の伝統文化の精巧さや美しさに触れてほしい」と話す。

 9月5日まで。8月9日を除く月・火曜と同11日は休館。一般200円、小中高生30円。問い合わせは同館、電話045(662)7581。

 
 

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