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「トランスジェンダー外来」開設 女性医療クリニックLUNAグループ

文化 | 神奈川新聞 | 2021年5月18日(火) 18:38

「患者さんのライフスタイルを心地よくするお手伝いができたら」と語る池袋真さん(いずれも女性医療クリニックLUNAグループ提供)

 横浜・元町にある女性医療クリニックLUNAグループ(関口由紀理事長)に、多様なセクシュアリティーの患者の来院を想定した「トランスジェンダー外来」が開設された。性別という大きなくくりではなく、固有の悩みや症状と向き合いながら一人一人の不安を取り除く医療を目指している。

 「誰もが安心して通える外来を作りたかった」と話すのは、同外来を担当する産婦人科医の池袋真さん(32)。背景には、出生時の性別とは異なる性を生きるトランスジェンダーの人たちが気軽に医療にかかれない切実な現実があった。

 例えば、法律上は女性でも男性として生活するトランス男性の場合。月経痛などの症状があっても、婦人科の待合室で奇異な目で見られることを恐れるなどして受診をためらうケースがあるという。

 池袋さんによると、タイで性別適合手術を受けた後に体に不調を来しながらも、帰国後に相談しやすい医療機関が身近になかったり、医師に自身のセクシュアリティーを一から説明することに負担を感じたりする人もいる。

 「こうして独りで我慢をして、疾患の早期発見ができず重症化するリスクもあります」。多様な性のあり方に対する医療現場の知識不足が課題であるとして、「どんなセクシュアリティーの人でも当たり前に受け入れる態勢であることを表明することで、一人一人が医療にアクセスしやすい環境を整えたい」と語る。

トランスジェンダー外来などに応じるクリニック3階の待合室

 外来の診療内容は多様だ。男性・女性ホルモン注射の投与やホルモン治療をしている人の定期検診、性別適合手術の術前検査と術後フォロー、子宮頸(けい)がんといった各種検診、性感染症の検査、セックスカウンセリングなど。海外のホルモン製剤を個人輸入して使用し、体にトラブルが起きた場合にも対応するという。

 このほか、肌荒れや眉アートメークなどの美容医療にも注力。「男女分けされている化粧水などどちらを使えばいいか悩む人もいるし、眉アートも女性限定の店舗が少なくない。その人の肌質に合った商品を提案したり、好みの眉の形を確認したり、性別にとらわれないケアを徹底します」

 待合室も居心地のいい環境づくりを意識する。性別変更や改名をしていないトランスジェンダーの人はフルネームで呼ばれることに苦痛を感じるケースがあることから、希望者には通称名で呼び掛けたり、場合によっては個室に案内したりといった対策も講じる。クリニック全体が性別にこだわらず、「1人の人」として患者と向き合っているという。

 「困っている人に手を差し伸べるのが医療の務め」と話す池袋さんが目指すのは「健康不安を抱えながらも行き場のない人たちにとって、安心できるかかりつけの医師になること」だ。

 4月の外来導入以降、全国各地から問い合わせを受けており、ニーズの高さを実感。「トランスジェンダーの人たちの訴えは一人一人が異なる」と、個別性を尊重した医療の提供を重視する。

 池袋さんは真っすぐな目で呼び掛ける。「全てのジェンダーに平等な医療を心掛けています。『トランスジェンダー外来』という名前を掲げることで、日頃診察を受けることに不安を感じている人の灯火(ともしび)のような存在となることが目標です。ささいなことでも気軽に相談してほしいですね」

 クリニックはみなとみらい線元町・中華街駅徒歩2分。トランスジェンダー外来は第2・4日曜に診療。完全予約制。問い合わせは同外来、電話045(662)0618。

門戸を開くことに意義がある/「ReBit(リビット)」代表の薬師実芳さん

 「婦人科に気兼ねなく相談できるのはすごくうれしい。多様な性の人に門戸を開いてもらうことに意義がある」。こう語るのは、性的少数者のキャリア支援などに取り組むNPO法人「ReBit(リビット)」代表の薬師実芳(みか)さん(31)=川崎市出身=だ。

 自身も女性として生まれ、男性として生きるトランスジェンダーの1人。男性ホルモン製剤の投与で月経が止まってからも、子宮に強い痛みを感じることがあった。だが、検査に訪れた大学病院では「専門外」として取り合ってもらえず、トランスジェンダーが治療や副作用について相談できる婦人科医の少なさを肌で感じている。

 婦人科系の疾患がありながら、男性的な見た目からやはり待合室でじろじろ見られてしまうのではと不安を覚えたり、診察時に自認する性別とは異なる性を意識させられる場面で苦痛を感じたりすることも珍しくない。痛みを放置し、子宮がんなどの発見が手遅れとなり命を落としたトランスジェンダーの人も実際にいるという。

 「トランスジェンダーでも利用が可能か病院に問い合わせるなど、受診にたどり着くだけでも苦労がある」。薬師さんは、ただでさえ健康上の不安を抱えながら、一層の負担がのし掛かる当事者の困難を明かす。

 医療から足が遠のくトランスジェンダーの実態は、日高庸晴・宝塚大教授の調査からもうかがえる。2019年9~12月、ライフネット生命保険の委託を受けてインターネット上で実施した調査にはゲイやレズビアン、トランスジェンダーら10~70代の1万769人が回答。このうちトランス女性の51・2%、トランス男性の38・8%が「性的指向や性自認を理由に体調が悪くても医療機関に行くことを我慢したことがある」と答えており、他の属性に比べて突出していた。

 「多様な性について正しい知識を持ち、適切な診断を出してくれる医療機関が増えてほしい」と話す薬師さんは、差別や偏見による生きづらさや抑うつ状態を抱えやすいトランスジェンダーの現状も指摘。「婦人科に限らず、精神科など各診療科、さらにカウンセラーや福祉業界などと連携した支援態勢が重要」と話している。(服部 エレン)

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