「ゴジラ」「ウルトラセブン」「日本沈没」「犬神家の一族」─。数々の特撮映画で、背景を描き続けた。「雲はいろんな表情でこれから起きることを伝えられる。作品を生かすも殺すも背景屋じゃないか」。日本映画黄金期の1950年代から筆を握り、「雲の神様」の異名を持つ島倉二千六(ふちむ)(80)。独特の空で円谷英二や黒澤明といった巨匠たちを魅了した人生を、川崎市多摩区のアトリエで振り返った。
「形がどんどん変わっていく雲は、つかみようのない絵なんですよ。描きものとしては一番難しい。ただ、面白いのも雲。同じものは二度と描けないから」
空と雲の絵にのめり込んだのは中学時代。生まれ育った新潟県水原(すいばら)町(現阿賀野市)の中学の版画部で、顧問・小林正四の指導を受けた。地元の瓢湖(ひょうこ)が舞台の映画が撮影されることになり、タイトルで使う版画も作った。
9人きょうだいの末っ子。名の由来は生まれた年の40年、全国で祝われた「皇紀2600年」だ。
モスラの羽デザイン
雲の神様 島倉二千六(上)「特撮の空」描き続け
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アトリエ雲で自身の背景画を多数収めた「特撮の空」を手にする島倉さん=川崎市多摩区 [写真番号:607971]
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大林宣彦監督作品「天国にいちばん近い島」(1984)の空(ホビージャパン提供) [写真番号:609538]
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黒澤明監督作品「八月の狂詩曲」(1991)の空(ホビージャパン提供) [写真番号:609539]