【2021年3月19日紙面掲載】
大正から昭和にかけて活躍した絵師、笠松紫浪(しろう)(1898~1991年)の没後30年を記念した回顧展。淡い色彩に郷愁が漂う木版画65点が並ぶ。
笠松は鏑木(かぶらき)清方の門人として日本画を学んだ後、絵師、彫師、摺(すり)師の分業による新版画に取り組んだ。
52年から59年は日本各地の風景をテーマに、京都の芸艸(うんそう)堂から約100点を刊行。その一つの「鎌倉大仏」の見本摺(ずり)と初摺を比べると、小雨が降る空が暗くなったり、女性の着物の柄が鮮やかになったり、と工夫が見られる。
同館の日野原健司主席学芸員は「芸艸堂版は、ゆったりとしたやや太めの線で描かれており、絵師が実際に風景を目の前にしてスケッチしたかのような手描き感がよく出ている。風景を眺めている絵師の優しいまなざしもより強く感じられる」と魅力を説き明かした。
太田記念美術館:28日まで。22日休館。一般千円ほか。JR山手線原宿駅徒歩5分。問い合わせはハローダイヤル050(5541)8600。