横浜市域に伝わる飛鳥時代以降の仏像を、総合的・体系的に初めて紹介する「横浜の仏像」展が、横浜市歴史博物館(同市都筑区)で開催されている。初公開の仏像9体を含む43点の仏像や出土品が並び、人々の信仰や美意識の変化を見ることができる。
同市内に点在する仏像を市が本格的に調査を始めて約50年となる。最も古い仏像は7~8世紀に作られた鶴見区・松蔭寺(しょういんじ)の「如来坐像(ざぞう)(伝阿弥陀如来像)」。高さ約25センチの小金銅仏で関西地方から伝わり、この時期の仏像が横浜にあるのは貴重だという。
平安後期には、仏師としてきちんと手ほどきを受けていないとみられる作り手による、地方ならではの個性的な仏像が見られる。
栄区・證菩提寺(しょうぼだいじ)に伝わる「薬師如来立像」は初公開。頭が大きく、足元は小さい木像で、頭の螺髪(らほつ)を省略し、耳や衣にもおかしな部分があるが、地方の仏師による素朴な味わいがある。
一方、運慶がもたらした新しい仏像様式を取り入れようとした様子がうかがわれる像もある。磯子区・東漸寺(とうぜんじ)の「薬師如来坐像」は13世紀の木像で、運慶の様式とそれ以前の古風な様式の混在が見られる。当時、運慶は源頼朝をはじめとする鎌倉武士の求めに応じて仏像を制作しており、関東の仏師にも影響を与えた。
人々が仏像に特別な力を与え、信仰の対象とした様子も伝わる。戸塚区・永勝寺の「阿弥陀如来立像」は親鸞聖人自作の伝承が残る木像。寺が荒廃していた戦国時代、馬上で門前を通り過ぎると落馬することが続いた。本尊の顔に面を掛けると治まったことから「面掛阿弥陀如来」と呼ぶようになったといい、かつて掛けられていたという面も展示している。
監修に当たった市文化財保護審議会委員で清泉女子大の山本勉名誉教授は「まだ分からないことが多い。どうしてこの仏像がここにあるのかを念頭に置き、文字資料からも研究を進めていくことが期待される」と話した。
3月21日まで。月曜休館。一般千円ほか。問い合わせは同館、電話045(912)7777。