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女の子とゾウの心温まる交流描いた絵本

文化・科学 | 神奈川新聞 | 2021年2月2日(火) 17:39

 女の子とゾウの心温まる交流を描いた絵本「ゾウとともだちになったきっちゃん」(福音館書店、1430円)が刊行された。著者はゾウの知能を研究してきた入江尚子さん(38)=横浜市戸塚区。実体験を基につづられた本作には、「動物たちと心を通わせてほしい」との思いがあふれている。

 お父さんと動物園に訪れた「きっちゃん」は、初めて目にするゾウに圧倒される。トラックのように大きな体、座布団みたいな耳。特徴的な風貌にすっかり魅了され、毎週のように会いに行く。

 ともに雌のアジアゾウ、「チャンポム」と「スアイ」が肩を並べている。小さなハトを怖がったり、チョウをうれしそうに追いかけ回したり。観察を続けるきっちゃんは、それぞれに個性があることを知る。美しい色彩とダイナミックな構図で描かれるゾウの姿もまた、本作の魅力だ。

 「ゾウは表情が豊か。そして、人と心を通わせられる動物です。私が経験した幸せを多くの人に感じてほしいと思い、このお話を書きました」と入江さんは言う。

よこはま動物園ズーラシアのインドゾウ「ラスクマル」と写る入江尚子さん(写真は本人提供)

 東京大学で動物行動学を学び、2010年にアジアゾウの足し算能力の研究で博士号を取得。国内外でおよそ30頭のゾウと触れ合ってきた。

 「初めはのっそりした大きな動物という印象でしたが、甘えん坊で人懐っこかったり、警戒心が強かったり、心と個性がありました」。実験の最中にゾウに話し掛けると、耳や目、尻尾など全身で応えてくれた。そんな交流の一端が絵本のモチーフになっている。

 繰り返し動物園に通うきっちゃんがチャンポムの名前を呼ぶと、耳をぱたぱた動かすといった確かな反応を得られるようになる。

 出産を控えたチャンポムとしばらく会えず、久しぶりの再会となった日には、じっときっちゃんを見つめておでこを震わせるチャンポムの姿も。入江さんによると、ゾウは人間の耳では聞こえない低周波音で会話しているとされ、額の震えがその合図。作中に描かれるゾウの「秘密のおしゃべり」も、動物に対する想像を膨らませてくれる。

 絵本作家のあべ弘士さんが描くゾウの表情に注目してほしいと言う。「きっちゃんが感じているチャンポムの心情の変化が目に表れています。チャンポムを心ある他者と認め、2人が通じ合う瞬間を読み取ることができるんです」

 7歳の娘を持つ母親でもある入江さんは、子どもたちにもそんな特別な体験をしてほしいと願う。「動物たちにも感情があります。きっちゃんのように、相手に気持ちを伝えようというひたむきさを持って、彼らと強い絆で結ばれてほしいですね。それは、自身の幸福という宝物に変わるはずです」

 
 
 

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