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将棋のはなし(183)充実した半年を

文化・科学 | 神奈川新聞 | 2021年1月5日(火) 16:05

【2020年11月8日紙面掲載】

 10月に奨励会三段リーグが開幕した。今期は36人が参加。半年かけてプロ四段の座2枠を争う。

 リーグ表に木村友亮三段の名前がない。三段昇段を決めたのが10月第1例会の1局目で、ぎりぎり間に合わなかったのだ。来年4月に始まる次期リーグから参戦する。

 木村君は昔の教え子。二段が長く、大学との両立が大変なのかと心配していたから、まずはほっとした。しかし半年待たされるのはきついだろうとも思う。そこで素晴らしい前例を紹介する。

 話は20年以上前にさかのぼる。私の友人である松尾歩二段(現八段)は、3月の2回の例会に三段昇段が懸かっていた。ここで昇段すれば、4月開幕のリーグに間に合う。

 ところが彼は第1例会を病欠。不戦敗にはならないが、結果的にこれが響いて4月からのリーグに出場できなかった。これは仲間内で話題になった。大勢を占めた意見は「自分なら、倒れてもいいから何が何でも例会に行く」。上を目指す若者にとって半年は長い。

 彼は4月の第1例会で昇段を決めた。そして半年間、将棋漬けの日々を送り、10月からの三段リーグで1期抜けという偉業を達成した。勇気ある病欠だったと思うが、無理をして負けては元も子もない。目先だけを考えずに実力を付け、見事に結果を出したのである。

 木村君は12月に、出身教室の手伝いに来てくれるという。ありがたいけど、ほどほどにね。充実した半年を過ごしてリーグに挑んでほしい。

日本将棋連盟指導棋士五段、本紙将棋担当記者

 
 

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