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文化部記者の体験記
修復した美術工芸品を特別公開 臨春閣の建造物保存修理工事で三渓園

文化 | 神奈川新聞 | 2020年11月26日(木) 13:53

「板絵十二支図額」に見入る来館者。修理のため壁から外された本図と、制作された色見取り図を見比べることができる。細部まで見てもらおうと、通常より館内を明るくしている

 横浜の名勝、三渓園(横浜市中区本牧三之谷)で、園を代表する臨春閣の重要文化財建造物保存修理工事が行われている。工事で一時的に取り外され、修復した美術工芸品を特別に公開する企画展「臨春閣─建築の美と保存の技─」が12月20日まで、園内の三渓記念館で開催されており、建物内を彩る障壁画や欄間、障子、襖(ふすま)といった装飾の数々を間近で鑑賞できる。モミジやイチョウが色づき始めた同園を訪ねた。

現在工事中の臨春閣(玄関棟)

 臨春閣は大正時代、大阪市内から移築。江戸時代初期に紀州徳川家の初代藩主が建てた数寄屋風書院造りの別荘建築で、内苑(ないえん)庭園の景観の中心的な建造物の一つ。三つの棟が、雁(かり)が群れをなして飛んでいくような形(雁行形)に配置された構成になっている。学芸員・美術担当の北泉剛史さんは「原三渓は当時、豊臣秀吉が建てた聚楽第(じゅらくてい)の遺構とされていた臨春閣を『桃山御殿』と呼び、秀吉ゆかりの美術工芸品を収集しては室内を装飾して日々の生活を楽しんでいました」と解説。実際に長男・善一郎の婚礼や三渓自身の葬儀が行われ、園内の建物の中でも特別であったことが分かる。

 大規模修理はこれまでに1958年と88年に実施。3回目となる今回は老朽化に伴う約30年ぶりの大修理で、檜皮(ひわだ)と柿(こけら)の屋根材の交換を中心に、耐震補強工事と美術品の修理も併せて行っている。通常、特別公開以外は非公開で外から内部を見学するだけだが、「左官や建具といった現代の匠(たくみ)たちの保存修理の技術を作品や資料で紹介したい」との思いから、建物に戻す前のわずかな期間を使い、企画展が実現した。

十二支の寅(とら)を描く様子。特殊光撮影など高度な技術で詳細な調査が行われたことで、装束の模様や細やかな表情まで再現できた(三渓園提供)
「板絵十二支図額」の一例。写真上は修理で汚れなどが取れ描線がはっきりと見えるようになった本図。同下は、複製を作製する案が検討され描かれた色見取り図で当時の鮮やかな色彩や動物たちの表情などが見て取れる

 最大の見どころは「板絵十二支図額」。本来、第二屋から第三屋へ向かう「繋(つなぎ)の間」の聚楽壁の中に埋め込まれる形で収められている。狩野山楽筆とされる同図は6枚の杉板から成り、さまざまな装束をまとい擬人化された十二支の動物が1面に付き2体ずつ描かれている。このような板絵は類例がなく貴重な作品だが、退色や劣化が激しく、複製を作製する案を検討。素材などを調べる詳細な調査が行われ、色見取り図を制作したが、最終的には現状保存となった。修復を担当した彩色工は学芸員に「難しい調査だったが、十二支それぞれに違う衣装を着せた構図や文様、細やかで軽やかながら、生き生きとした墨線など当時の絵師たちの遊び心と卓越した技術が感じられ、楽しく作業できた」と話したという。

第二屋の「芦雁図」(4面)。原本(写真手前)とコロタイプ印刷の複製(同奥)を並べて展示
第二屋の彫刻欄間にはめ込まれた「浪華十詠和歌色紙(なにわじゅうえいわかしきし)」。木の傷みが著しい部分は新しい木を彫り、木目や色調も調整。紙の破れや汚れを取り除いた色紙は金箔金粉の輝きが戻った

 第一屋「蓮の茎の戸」はハスの枯れた茎を使った戸で、修理には園内の蓮池から採集したハス茎を使用。第二屋「浪の間」の襖絵「芦雁図(ろがんず)」は今回初めて、普段保管している原本と、90~93年に保存のため制作したコロタイプ印刷の複製を並べて展示している。北泉さんは「伝統建築物を守るためには、それらを守り続けている技術を守ることも大切。匠の技術そのものが文化財に値します。未来を担う次世代にも興味を持ってほしい」と来園を呼び掛ける。

 午前9時~午後5時(最終入園は同4時半)。無料(入園料のみ。一般700円ほか)。JR根岸駅からバスで本牧下車10分。27日、12月5・11・19日午前10時半~11時、担当学芸員によるギャラリートークも。問い合わせは三渓園、電話045(621)0634。

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