【2020年10月25日紙面掲載】
先週の続き。谷合廣紀四段(26)のプロ入りを祝う席がそろそろお開きという頃合いで、日本将棋連盟普及指導員の犬塚将さん(52)は色紙を取り出した。谷合四段と、同席している渡辺和史四段(26)、香川愛生女流三段(27)に寄せ書きをお願いしたのである。
何かの記念として将棋界では基本手筋だが、業界人の私は、昔の教え子たちにサインを求めるなんて照れくさくてできない。犬塚さんも半分は業界人だが、一人の将棋ファンでもあるので、自然に行動できたのだろう。そして何と、私の分として色紙をもう1枚用意してくれていた。
寄せ書きでは、それぞれが熟語を書くようなスペースはない。とはいっても名前だけではさみしい。私は「『遊々塾』って書いてよ」とリクエストした。「遊々将棋塾」は昔、みんなで対局していた教室名である。このメンバーでの集まりに最適な言葉であろう。
3人は快く応じてくれた。最後に筆ペンを持った香川さんは「二人の字が大きくて『塾』って書けない」なんて言いながら、ひらがなで揮毫(きごう)。こうして珍しい色紙=写真=が出来上がった。
遊々塾の講師はハードな仕事だったけど、今になってこんな見返りが頂けるなんてうれしい。みんなありがとう。そして犬塚さんに感謝。
日本将棋連盟指導棋士五段、本紙将棋担当記者