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実物そっくり精巧な描写 横須賀美術館「上田薫回顧展」

文化 | 神奈川新聞 | 2020年10月5日(月) 19:34

上田薫「あわK」を眺める来場者。泡の表面に映り込んだ撮影中の自身の姿も描かれている=横須賀美術館

 実物そっくりの精巧な描写で「写真みたい」と評される絵画に取り組む鎌倉市在住の画家、上田薫(91)の回顧展が、横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開かれている。落下する生卵やスプーンですくったゼリー、雲が流れる空など、初期から現在までの代表作約80点が並び、切り取られた一瞬に込められた時間や光の変化を堪能できる。

 東京芸大で油絵を学んだ後、デザイナーとしてグラフィックデザインの世界で活躍。1970年代に描いた貝殻の作品をきっかけに、対象を精緻に表現する現在の画風を確立した。

 自身で撮影した写真をキャンバスに投影して輪郭をとり、写真を見ながら彩色する。リアリズム絵画の代表者とされることが多いが、本人はかつて個展会場で「僕の絵は本当はリアリズムじゃない」と語ったことがある。「絵空事というけれど、絵は言ってみれば手品と同じで見る人をだましている。立体を平面にすること自体、一種のだましだから」

 だが、丹念な描き込みが現実感を一層強くする。川の水面を捉えた「流れ」シリーズでは、きらめく光の反射と対照的な暗い水面を丁寧に描く。その暗さが鮮やかな色彩を際立たせる。

 同館の冨田康子学芸員は「絵の具とキャンバスの質感から生まれる色の濃さ、深みが写真にはない上田さんの作品の魅力。絵の具をキャンバスに染みこませて染みこませて、一体となったときに出てくる暗い色が深い」と説く。

 12月に92歳となる上田。現在も絵筆を握り、庭のアカンサスの力強さやサラダのみずみずしさを追求している。「描いている作品が楽しい」と言葉を寄せた。

長島雪操展も開催中

長島雪操の「花鳥画冊」。筆さばきに迷いが見られない=横須賀美術館

 所蔵品展では、幕末から明治にかけて、八幡久里浜村の名主で文人画家として活動した長島雪操(1818~96年)の作品や関連資料約50点を紹介している。

 俳句や土佐派の大和絵に親しむなど豊かな教養を身に付けていた雪操は、浦賀奉行の浅野長祚(ながよし)(梅堂)との交流を通して優れた中国絵画を目にし、文人画の道へ進んだという。

 近年、横須賀市に38点が寄贈された「花鳥画冊(かちょうがさつ)」は植物や虫、鳥などを描いたもので数え67歳の作品。文人画の筆法を自分のものとし、写生というより頭の中のモチーフを楽しみながら描いている様子が伝わる。

 同館の沓沢耕介学芸員は「人望もあり、書画の高い技術も広く知られていた。地元の人々から毎週のようにふすま絵や看板、お墓に刻む文字などを頼まれていたようだ。近世の横須賀の文化度が垣間見える」と話した。




◆「上田薫展」は11月3日まで。10月5日休館。一般千円ほか。

◆「長島雪操展」は12月13日まで。10月5日、11月9日、12月7日休館。一般380円ほか。

◆問い合わせは同館、電話046(845)1211。



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