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佛教大学准教授・田野中恭子さん
家族が心の病を患った子どもたちへ ドイツ児童書を翻訳出版

文化 | 神奈川新聞 | 2020年9月7日(月) 19:17

「悲しいけど、青空の日」の原書は、精神疾患の親がいる子どもを支援するシュリン・ホーマイヤーさんが2006年に手掛けた

 家族が心の病を患った子どもたちのために書かれたドイツの児童書が、日本語に翻訳された。親の不調の理由が分からず不安を覚え、周囲に打ち明けられずに孤立を深める当事者の姿が描かれる。訳を手掛けた佛教大学准教授の田野中恭子さん(51)=京都市=は「本を通して『あなたは独りじゃない』と伝えたい」と話す。

 タイトルは「悲しいけど、青空の日」(サウザンブックス社、2640円)。1人の少女の視点から、精神疾患の親を持つ子どもの気持ちを丹念に映し出す。

 町外れの小さな家。9歳のモナは母と2人暮らし。庭で本を読み、ハイキングをする。母と過ごすそんな穏やかなひとときを「青空の日」と呼んでいる。

 「悲しい日」も気まぐれにやって来る。部屋は散らかり、食事は出てこない。娘の問い掛けに何一つ答えられないほど、母は疲弊して横たわる。

 「ママはどうしてあんなに悲しいのかな」。心の奥底には怒りもあるけれど、「ママがもっと悪くなってしまう」と気持ちにふたをする。負の感情と格闘しながら、母を苦しめる精神疾患のことを少しずつ学んでいく─。

「精神疾患患者の子どものケアは二の次になりがち。専門家による社会的な支援も必要です」と話す田野中恭子さん(本人提供)

 3章構成の本書はモナの物語のほか、同じ境遇にいる子たちに向けた病気の説明やアドバイス、必要なサポートを説いた大人へのメッセージを収録。モナの母親を非難せず、病を患う親の苦難にも寄り添う。

 精神疾患患者の家族の研究と支援に取り組む田野中さんは、およそ10年前からモナのように思い悩む子どもたちと接してきた。「多くが非常に厳しい中を生きています。病気の説明を十分に受けられず、親の変調は自分のせいだと自らを責め立てる子もいます」

 子どもの自尊心が削られないよう、言葉を尽くして精神疾患の説明をする必要があると話す。「子どもは想像力が豊かな分、恐怖心を膨らませます。親が気力を失う原因は病気にあり、決してあなたのせいではないと繰り返し伝えることが重要です」

 2017年の厚生労働省の調査によると、日本でうつ病や統合失調症などで医療機関を受診した患者の数は419万人。30人に1人の割合だ。心の不調は誰にでも起こりうるものだが、「精神疾患への無理解や偏見は根強い」と田野中さんは指摘する。

 奇異な目を向けられることを恐れ、家庭の内外で疾患をタブー視する。こうした風潮から、子どもたちも他者への相談をためらい、不安を独りで抱え込んでしまう現状があるという。

 本書は支援機関の連絡先を記載しているほか、学校の先生らに支えられるモナの姿も描かれる。「悩みに向き合ってくれる人は必ずいる。つらい時はSOSを出してほしい」と田野中さん。周囲の大人には「怒りや不安といったありのままの感情を受け止めてもらうことで、救われる子がいます」と呼び掛けている。

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