芥川賞を受賞した「白い人」や「沈黙」などカトリック信仰に基づき、一貫して神と人間というテーマで書き続けた作家、遠藤周作(1923~96年)の生涯と作品を振り返る「没後15年 遠藤周作展―21世紀の生命(いのち)のために―」が23日、横浜・港の見える丘公園内の県立神奈川近代文学館で始まる。
63年から20年以上住んだ東京・町田の仕事場を「狐狸庵(こりあん)」と名づけ、自らも狐狸庵山人の雅号で親しまれた。同展では、宗教をテーマにしながら人間の弱さへの共感を描いた文学の、時代を超えたメッセージを問い直す。
「母なるもの」「西洋の神と文学」「生命の河へ―遠藤文学の展開」など5部構成。草稿、書簡、書など約500点を紹介する。インドを舞台に、すべての魂が憩える宗教の在り方を提示した最後の書き下ろし長編小説「深い河(ディープ・リバー)」の草稿は、ノートにきちょうめんな文字がびっしり書き込まれ、作家のナイーブな内面を伝えている。
書簡も豊富に展示。遠藤周作が慶応大学の先輩作家、堀田善衛に宛てた書簡31通が先月、同館所蔵の「堀田善衛文庫」から発見され初公開されている。
また、マザー・テレサや江藤淳、瀬戸内寂聴らと交わした書簡も並び、交流の広さをうかがわせる。
このほか、遠藤が大切にした母親の形見のマリア像、踏み絵に関する書からは、作品の背骨になった深い信仰心をあらためて伝える。
6月5日まで。月曜休館(5月2日は開館)。一般600円。65歳以上、20歳未満と学生300円。高校生100円。中学生以下無料。問い合わせは県立神奈川近代文学館電話045(622)6666。
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