昨年5月に川崎市川崎区日進町の簡易宿泊所2棟が全焼し、11人が死亡した火災を巡り、川崎市は30日、今年5月から8月にかけて市内43棟に対して行った2度目の合同立ち入り調査の結果を発表した。使用停止要請などを受けた3階部分の居住が続く施設が5棟、宿泊者は少なくとも59人と、火災発生当時から大幅に改善されたが、施設の資金難や入居者の高齢化などを背景に是正完了の見通しは立っていない。
火災は昨年5月17日未明に発生。「吉田屋」から出火し、隣接する「よしの」を含めて全焼し、11人が死亡、17人が負傷した。市は当時市内にあった簡宿49棟の調査を実施し、うち違法増築などがあった35棟に3階部分の使用停止・制限を求めてきた。
今年5月から行った2度目の合同調査では、30棟で3階からの移動完了を確認し、同階の宿泊者も発生当初の300人程度から59人に減った。建築基準法の耐火規定に違反していた24棟のうち、3階部分の使用停止などの是正を行った施設が16棟(廃業など4件含む)で、未完了の8棟のうち6件では是正計画が進んでいる。
同じく消防法違反の23棟、旅館業法違反の20棟に関しても、それぞれ13棟、11棟で是正が完了し、残る施設も大半が是正に向けた計画が協議されている。全体の宿泊者数も市の転居支援などにより、火災発生時の1349人から800人程度に減少。転居数は今年に入っても月20人強のペースで推移している。
市は「かなりの部分で進んだとは思っているが、是正の進まない部分は特定の施設に固まってきている。そこに関しては先は見えていない」と難しさも語った。未完了の施設について今後も指導・協議を重ねていくとする一方で、是正完了施設に対する定期的な検査・確認などについては「検討していく」とした。