世界文化遺産に登録された富岡製糸場(群馬県富岡市)の敷地で出土した「ヨコスカ造舩所」刻印入りのれんがなど、技術や文化などの伝播(でんぱ)を探る文化財展が、横須賀市自然・人文博物館(同市深田台)で開かれている。テーマは「ツナグ・ツタワル・オクル」。富岡製糸場総合研究センターの今井幹夫所長らを招く講演会も開かれる。
展示される文化財は、弥生時代から近代までの約100点。日本に造船技術を伝えたフランス人技師ティボディエの官舎跡(現・米海軍横須賀基地内)で発掘された「横須賀製鉄所(のちの横須賀造船所)」、富岡製糸場の西繭倉庫敷地で出土した「ヨコスカ造舩所(横須賀造船所)」の刻印が入ったれんがなどを並べ、技術が伝わっていった状況を例示する。
ティボディエの官舎は富岡製糸場と同じ「木骨れんが造り」で、官舎の方が早く建設された。製鉄所と製糸場はともに、フランス人技術者のバスチャンが設計に携わり、横須賀の職人も一緒に富岡へ出向いている。それゆえ、富岡出土のヨコスカ刻印入りは、製糸場建設で使うれんがを製造するための見本だったのではないかと推測されている。
また、横須賀製鉄所の「三ケ浦」という海岸地域で製造され、「ミカホ」の刻印が入った国産最古の洋風タイルを展示。横浜居留地出土の英、独、仏製タイルと比較し、技術や文化が伝わっていく流れを考える。
さらに、豊臣秀吉が小田原攻めの際に、横須賀市野比の寺院や周辺での略奪、焼き打ちなどを禁じた文書「禁制」。古墳時代の古代舟の土製品など多彩な文化財を並べ、歴史的な背景や意味合いなどを探る。
3月1日まで。富岡の今井さんを招く講演は2月14日午前10時半から。いずれも入場無料。問い合わせは、市教委生涯学習課電話046(822)8484。
【神奈川新聞】