横浜市は面積の約7%が農地。農業を守り、新鮮な農蓄産物を市民に提供し続ける全国でも例のない大都市です。その先頭で活躍する若い農業者をご紹介します。
父から子へ、手渡されたバトン
北風に震える初冬の街に、鮮やかな赤やピンクや白い花で彩りを添えるシクラメン。今年も出荷の最盛期を迎えています。
農業をしっかりと根付かせている大都市横浜は、野菜や果物、畜産物などと並んでシクラメン栽培も盛んな地域。特に神奈川区や港北区には花卉農家が多く、港北区綱島東の吉原英治さんもその1人です。 合計約6,000鉢のシクラメンを栽培しています。
父親の正剛さんが、40年近く前に野菜やコメ中心の農業からシクラメンに転換。今は英治さんが後を継ぎ、連日の忙しい栽培管理のかたわら経営にもあたります。
かながわ農業アカデミーで2年間勉強して、20歳の時に就農。「わずかな気象の変化や施肥の加減で花の生育がまったく違うので最初は苦労しました」と英治さん。正剛さんをはじめ、研修先の先生や先輩の教えを乞いながら技術を磨き、少しずつ自分なりの工夫も加えて独り立ちしました。
正剛さんも「いつまでも私に言われるままでは面白くないでしょうし、私のやり方がベストでもありません。肥料、薬剤などの種類も大きく増えました。これからは先頭で引っ張っていってもらおうと思っています」と優しく見守ります。
さらなる品質向上が永遠のテーマ
シクラメン栽培は一年がかり。すでに来年用の種をまき終え、今後、温度管理や水やり、施肥、害虫の駆除など、出荷作業とあわせ連日の細かな作業も続きます。「シクラメンは繊細です。ただ光を当てればいい、肥料を与えればいいというものではありません」と話します。特に神経を使うのが夏の暑さ対策。ヨーロッパ原産のシクラメンは日本の高温多湿が苦手です。扇風機を使うなど、その日の気温や天気に合わせて工夫をしています。またこの時期は、手作業で葉の形を1枚1枚整え、花茎を中央に集めていく“葉組み”も重なります。
「本当に自分が満足できるものはいくつもありません。1年1年工夫を重ねて横浜のシクラメンをいつかはブランド化できるように努力していきたい」と語る英治さん。今年11月に開かれた県の品評会では見事優秀賞に。毎日の頑張りが結果としてあらわれました。それでも「品質向上は永遠のテーマ。もっと質の高いシクラメンを目指していきたいです」と意気込みます。
周辺では都市化が進み、栽培用のガラスハウスもいつの間にか住宅街の真ん中に。しかし、都市農業として地域の人たちと一緒に育てていきたいと、毎年、小学生の見学を受け入れてシクラメン栽培を紹介しています。
間もなくクリスマス。一年がかりで育てた努力の結晶が、寒さの一段と増した街に彩りを添えます。
JA横浜の黒沼利三 代表理事副組合長が語る!横浜農業の
魅力
シクラメン栽培が盛んな大都市横浜。農家数、栽培面積は全国有数です。農家それぞれが一年がかりで丹精込め育てています。花の色や形、大きさなど種類はさまざまですが、どれも高品質。 吉原さんはじめ若き担い手も、さらに品質を高めようと、日々研さんしています。
企画・制作:神奈川新聞社クロスメディア営業局