横浜市は面積の約7%が農地。農業を守り、新鮮な農畜産物を市民に提供し続ける全国でも例のない大都市です。その先頭で活躍する若い農業者をご紹介します。

完熟したものだけを収穫
「浜なし」は、横浜市で認定された果樹生産団体がつくる梨に付けられた統一ブランドです。「幸水」や「豊水」がその代表的な品種です。なかなか手に入らないことから“幻の梨”ともいわれています。
手に入りにくいのは生産量が限られ、直売で売り切れてしまうから。スーパーや百貨店の店頭に並ぶことは、ほとんどありません。
「木上で完熟し、その日が食べ頃となっているものだけを収穫し、それを買っていただく。それが浜なしです。常にもぎたてを食べていただけます」。通常、市や県をまたいで流通する農産物が小売店の店頭に並ぶのは、どんなに早くても収穫の翌日です。
しかし横浜市などの大消費地の間近で営まれる「都市農業」であれば、収穫したその日に食べていただける。「だからおいしいともいえるんです」と栗原駿さん。
「いちばんおいしい時に、手渡すようにして消費者の皆さんにお届けできる。これは都市農業の大きな魅力だと思います」

都市農業の魅力を伝えたい
両親や祖父母と共に約42アールの梨畑で栽培を続ける駿さん。10年前、結婚と同時に「フルーツパーク大門」の屋号で営まれる家業の梨栽培に加わりました。
「剪定(せんてい)から摘雷、受粉、摘果、病害虫の予防など、収穫を迎えるまで、1年を通して気の抜けない作業が続きます」。特に工夫しているのは、いかに木の勢いをつけるかです。
「昔は秋から冬にかけて、施肥は1回でした。しかし今は細かく追肥するやり方を取り入れています。また、葉に直接肥料をつける新しい方法も試みています。木も個性がありますから、状態をよく見て、その木にあったキメの細かな施肥を行っていくことが必要です」。父の智さんも「経験は私の方がずっと長いけれど、新しい技術については駿に教わることもある。頼もしい存在です」と語ります。
こうした親子で取り組む梨づくりは、昨年大きく実を結びました。横浜市が主催する浜なし持寄品評会で優秀賞のトップである「神奈川県知事賞」を受賞したのです。
地元の2つの小学校から、3年生全員をそれぞれ年に4回、梨栽培の節目に合わせて招待。子供たちに梨栽培を紹介し、鋭い質問にも答えます。「学校の行き帰りに、子供たちが挨拶をしてくれるようになりました。これからもおいしい梨を届けるだけでなく、農業の大切さを伝えていきます」。地域と共存し、支え合う都市農業の未来を担います。
JA横浜の黒沼利三 代表理事副組合長が語る!横浜農業の
魅力

今が旬の『浜なし』。ぎりぎりまで木で熟させ収穫することから、新鮮なまま味わっていただくことができます。横浜ブランド農産物にも認定され、市内では緑区、青葉区、都筑区、港北区、泉区、戸塚区などで栽培されています。栽培農家も品質の向上と栽培技術の習得、規格や容器を統一し、『浜なし』ブランドのより一層の定着に努めています。
企画・制作:神奈川新聞社クロスメディア営業局