ルーペでのぞく小窓の世界-。マッチ箱ほどの大きさの画用紙に、緻密な風景画を描く川崎市の職員がいる。生田緑地整備事務所の清田陽助さん(28)=川崎市幸区。自然と向き合う業務にも生かす観察力と正確な描写は個展を開くほどの腕前で、職場近くや旅先で見た自然の美しさを細密画に込める。
日光を受けてきらめく水面、苔(こけ)むした岩、夕日の落ちる海…。
多摩川の河川敷に立つ「二ケ領せせらぎ館」(多摩区宿河原)で開かれている清田さんの個展。縦3センチ、横4センチほどの画用紙に描かれた水彩画10点が並ぶ。会場に用意されたルーペをのぞくと、微細な筆のタッチまで見て取れる。
清田さんは造園の技術職員として生田緑地に勤務。木々の維持管理や剪定(せんてい)など緑地の魅力向上に汗を流す傍ら、これまで40点ほどの作品を描き、4回の個展を開いてきた。
自宅から見える多摩川や通勤途中にある生田緑地の隠れスポット、旅行で訪れた断崖絶壁など、「奥行きや広がりがあり、細密画にぴったり」と感じた風景が“素材”だ。
スケッチや写真を基に、適当な大きさに自らカットした画用紙に筆で水彩絵の具を重ね、緑や水辺の色を表現する。1日3時間以上続けると「手が震えてくる」ほど細かい作業。完成まで約1カ月かかる。
中学時代は美術部。通常のサイズで油絵などを描いていたが、「絵が細かすぎる」と言われたことから高校生の時に細密画を始めた。本格的に絵画を習ったことはない。
美術とともに自然が好きで、大学では造園学を専攻。樹木の知識を細密画にも生かし、木や葉の形状を正確に描き込む。
小窓からのぞき見た風景のような細密画の魅力をこう語る。「まず離れて全体を眺め、次にルーペで細かいところをじっくり見る。すると絵の中に溶け込むような気持ちになる。そんな感覚を味わってほしい」
個展は入場無料で午前10時~午後4時。月曜は休館で31日まで。問い合わせは二ケ領せせらぎ館電話044(900)8386。
【神奈川新聞】