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【鎌倉エリア特集】心と心で伝えたい「本物志向」(作家:藤沢周)

神奈川新聞 | 2014年4月16日(水) 15:51

北鎌倉に住んでまもなく20年になる。都心からほどよい距離感があり、大船を過ぎるとゆったりとした「鎌倉時間」が流れるのが心地よい。自然に囲まれ一本路地に入ると静かだ。

作家デビュー時、「近代文学を破壊してやろう」と意気込んでいた。それがある日、友人の先輩が住む北鎌倉を訪れた。円覚寺本堂の裏で寝転がってみると、一塵の風。ふいに声が聞こえた。「おまえは、ここに住みなさい」。

腰の重い自分が、翌日には「近代文学」の聖地ともいえる地に移住を決めた。以来、毎日がハレと勉強。どこを歩いても落ち着く。かつては禅僧が行き交っていた姿を思い浮かべる。

鎌倉の人たちは本物ではないと認めない。文化にしろ、芸術にしろ。その「本物志向」は小説のヒントにもなった。著書で挙げると、禅寺が舞台の「サイゴン・ピックアップ」があるし、一番影響を受けたのは鎌倉の闇と人間の無意識を描いた「キルリアン」だろう。

武家の古都で剣道に出会ったのは46歳の誕生日。息子に付き添った自分がはまり、昨年11月に四段を得た。勝ち負けではない完璧な打突を追求する。禅の考え方がかなり絡んでいると思う。

鎌倉まつりは、「流鏑馬(やぶさめ)」「静の舞」など、源頼朝から続いてきた歴史の時間を味わえる。経済優先主義とは対極にある文化をはぐくんできた。これを大事にしたい。

世界には、たとえば武道や禅の都であることを示せたらいい。流鏑馬がいつでも行われている状態を作ることも一考だろう。鎌倉の人たちは好まない手法かもしれないが、目に見える形として、武家屋敷や僧侶の列など、外国の人たちに分かりやすい文化・伝統はあるのだから。

ただあくまでも精神性がキー。禅の考えを表す言葉でいうなら「不立文字(ふりゅうもんじ)」。文字で表現するのではなく、心と心で伝えていけたらいいと思う。(談)

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