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【新卒採用特集】神奈川県内企業の魅力と直面する課題

神奈川新聞 | 2018年3月1日(木) 05:53

【新卒採用特集】神奈川県内企業の魅力と直面する課題
【新卒採用特集】神奈川県内企業の魅力と直面する課題

人手不足感募らす中小 対話重ね適職と出会いを


インタビュー
水口 勉(みずぐち・つとむ) 県中小企業家同友会代表理事


 きょう3月1日は、会社説明会の解禁日。2019年卒の大学生の就活シーズンが本格的にスタートする。ことしは求人倍率も高く、学生にとっては恵まれた環境といえそうだが、中小企業は人手不足感が一段と強まっている。神奈川県中小企業家同友会(神奈川同友会)の水口勉代表理事=ジャパウイン社長=は「神奈川には魅力的な中堅・中小企業が少なくない。採用担当者と話して、自分に合った企業と出会って欲しい」と語っている。


中小企業の魅力を語る県中小企業家同友会の水口勉代表理事
中小企業の魅力を語る県中小企業家同友会の水口勉代表理事

 神奈川同友会は、県内の中小企業800社を会員とする経営者団体。異業種交流を始め、共同での人材発掘、新入社員研修、幹部育成などにも取り組んできた。

 2017年秋の会員企業対象のアンケート結果によると、現在の経営上の問題点で最も多かったのが「従業員不足」の19・4%、次いで「人件費増加」が14・2%。人手不足の深刻さと経費増に悩んでいる様子が分かる。

 川崎で福祉関連事業などの会社を経営している水口代表理事は、自社については「今春の新卒数人の採用は決まっている」としながらも「残りは、中途採用を募集するが、それがなかなか難しいのが実態」と語る。大手企業が採用を増やす中で、名前の知られていない中堅・中小企業には「業種、業界問わず、なかなか人材が回ってこない。選べない」状況という。

 それでは、どのようにして、採用したい学生と「出会う」のか。「学生さんと話をする。じっくり話しているうち、大企業よりも地域の企業に向いていると分かる人が出てくる」という。例えば「家から通えて、転勤がない」「地域で長く仕事をしていて、安心できる」そんな地元企業の良さを理解してくれた学生が入社してくれるという。

 学生の父母は、企業のホームページを見ている。「長い間、きちんと事業を続けている。経営計画もちゃんとしている。そういうところを確認して、安心して子どもを任せてくれる」という。

 最近の若者には、ドライな子も多い。この会社で「やりきった」と感じると転職しようとする子も。「ある程度の子には、ヒアリングをしたうえで、大胆に仕事を任せることも大切」と語る。入社2、3年でも、ある程度のことはやらせる。個性を伸ばす。そういう自由も、中小ならできることもあるというのだ。

 学生へのアドバイスを聞くと、「人事の担当者に、じっくり話を聞くこと」という。「人事部がなくても、人事の担当者がしっかりしているかどうかで判断すればいい」。「担当者と対話する中で、自分のキャリアイメージを膨らませる。会社と一緒に、つくることができればいい」という。

 中小企業からすると実は採用は「一年中やっているイメージ」。「企業の採用担当者とよく話をして、自分に適した企業を探して欲しい」と話していた。

県内の中堅・中小企業で働く

湘南の海や緑の自然が近い神奈川が好き


化工機プラント環境エンジ株式会社(川崎市川崎区)
設置設計部配管チーム
二瓶 康介さん(2008年入社)



3DCADの設計ソフトを使って設計した配管のチェックを行う二瓶さん。「アプリケーションの進化で、仕事がしやすくなっています」
3DCADの設計ソフトを使って設計した配管のチェックを行う二瓶さん。「アプリケーションの進化で、仕事がしやすくなっています」

 「大学時代は応用化学科で分析について学んでいたので、就職も分析を中心に技術系職種に絞りました」

 平塚市の出身で大学も厚木市内。ずっと神奈川で生活していた二瓶さんは、「できれば就職しても生活環境の変わらない県内の企業に就職したい」と考えたが、技術系の場合で職種を絞ると、なかなか希望する地域に思う職種の企業は見つからない。勤務地を首都圏まで広げて、企業を探した。そして、技術系の企業合同説明会で出会ったのが、化工機プラント環境エンジ株式会社だった。

 「入り口は職種だったのですが、勤務地が県内であったので、これだと思いました。面接の時に、学生をよく見ている会社という印象があって、好感を持ちました」。事業内容も大学時代の研究に類似した部門があり、さらに、本社事業所が神奈川県内で、自宅から十分通勤もできる範囲という一時はあきらめかけた条件にもかない、早々に就職を決めた。

 「入社当時から分析ではなく、工場設備や公共施設のプラントの配管設計に配属されましたが、10年を経過して、仕事の深さがわかるようになりました。大企業ではないので、全体を見渡せる程よい規模の現場も多く、プロジェクトが完成するたびに達成感を感じます。性格的にも技術職向きなので、この仕事は自分に合っていると思っています」

 「就職しても週末は地元の友達とよく国道134号線や、緑の多い厚木の郊外にドライブしたり、釣りをしたりして、エネルギーを充電します」

 今は会社に近い鶴見に引っ越した二瓶さん。「東京に出るのも便利ですし、混雑した通勤電車に揺られる時間は少なくなりました。それでも、すぐ平塚に戻れるし、海や緑は近い方がいいですね。やっぱり神奈川が好きなんですね」

歴史の中で最新を発信できる環境が横浜の魅力


株式会社 キタムラ(横浜市中区)
営業企画部営業企画室広報担当主任
辻 桜さん(2012年入社)



新作のベリーシリーズを説明する辻さん。「中学生になって初めて買ってもらった財布もキタムラでした」
新作のベリーシリーズを説明する辻さん。「中学生になって初めて買ってもらった財布もキタムラでした」

 「中学、高校、大学とチアリーディングを続けた私は、デスクワークよりも人と接する方が好きで、この会社に就職しました」

 東京世田谷出身の辻さんだが、祖母や母がキタムラのバッグのファンだったこともあって、横浜の企業も決して遠くない存在だった。

 入社1年目は店舗に配属。翌年3月に元町の本社営業企画部商品企画担当となり、その1年後。広報担当となるものの、商品企画が楽しく、今は兼務する。

 「商品の企画をスケッチの段階から知っているので、PRの際もその経緯やデザイナーの意図を伝えられるのが私の強みです」。週2回の商品会議や店頭での接客に生かされる。

 「横浜は、みなとみらいの夜景をはじめ、東京とはまた違った港町の風景や、古いにつけ新しいにつけて見どころもたくさんあります。お店も商店街もロケ地になったり雑誌や番組で取材されることも多く、改めて、人々を引きつける魅力のある街だと実感します」。広報担当として、メディアへの対応も忙しい。

 「横浜には〝西洋文化発祥〟の場所や明治時代から続く店や企業など歴史がありながら、地域ぐるみで新しい取り組みにチャレンジするエネルギーがあります」

 ユニークな広告展開に加え、SNS、ウェブサイトを利用した新しいキタムラファンの開拓が辻さんの課題。

 「もともと元町ブランドにこだわるお客さまも多いのですが、東横線の延伸やJR石川町駅の副駅名で他県からのお客さまもずっと増えました。元町だけでなく、みなとみらいや横浜駅周辺など、横浜全体としてもっと盛り上がらせたいと思っています」

 歴史を大切にしながら新しいウエーブを起こす横浜。既成概念にとどまらないフレキシブルな発想と豊かな好奇心を生かせる環境がある。

短期決戦、どう戦う 地域の中小にもチャンス



インタビュー
岡崎仁美 就職みらい研究所所長


 ことしも短期決戦で売り手市場。学生にはいい環境だが、地域の中堅・中小企業にもチャンスがある―。リクルートキャリア・就職みらい研究所の岡崎仁美所長にことしの就活の特徴を聞いた。


岡崎 仁美 就職みらい研究所 所長
岡崎 仁美 就職みらい研究所 所長

 2019年卒の学生の就活シーズンは前年同様、採用広報活動は3月に、面接選考は6月にそれぞれ解禁されます。12年卒までと比べると、広報活動は5カ月、面接選考は2カ月繰り下げで、広報活動期間は3カ月と、当時よりも1カ月短くなっています。

 ただこの日程はいわゆる紳士協定。例えば中堅・中小企業の面接選考は6月よりも前から盛んに行われています。面接選考開始が4月のころは、大手がまず面接し、その後に準大手、それから中堅、中小と、どちらかというと採用数も採用力も高い企業から順に決まっていっていたのが、就活開始時期繰り下げにより「中小が先、大手が後」という、いわば構造変化が起きました。いずれにせよ、求人倍率の高さから企業は学生への情報提供にかなり積極的ですので、就職活動をする学生にとっては恵まれた環境にあるといえます。

 一方で気になるデータもあります。公益社団法人 全国求人情報協会が2017年3月、入社直前の学生を対象に、「もう一度就職活動をするとしても今の就職先と同じ企業(団体)に就職したいか」と聞いたところ、「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」の合計は50・6%にとどまりました。

 志望した会社への入社を目前に、ワクワクしているかと思ったら、戸惑いもあるのでしょう。「この会社で本当に良かったのか…」と。短期間、まっしぐらに行う就活では、メディアでよく見る企業、消費者として接する企業にばかり目が行ってしまう可能性が高い。きちんと就職先として企業を見ているかが大切です。

 もともと日本では、就職を考える時期が諸外国に比べて遅い傾向があります。卒業後の進路を決めた時期について、ドイツやアメリカでは6割前後が大学前半までである一方、日本では大学の後半という人が3分の2にも上るのです。大学のある都市部の企業、知名度のある企業ばかり目が行ってしまいがちなのもうなずけます。

 そこでいま、地方の高校はキャリア教育に力を注いでいます。地域の企業の良さに、早くから気付いてもらうためです。

 厳しい環境にあると思われがちな地域の中堅・中小企業ですが、実は就活生の志向に合った点も少なくありません。短期間での劇的な成長はしにくいが、歴史があり、安定した企業。特定の地域で働くことができる。これらは、大学生が「働きたい組織」として選んだ特徴です。地域のしっかりした中小企業は、その良さをアピールすれば、若者の心を射止める可能性は十分あると思います。


就職みらい研究所「就職白書2018」より


採用・就職活動開始時期の変遷
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企画・制作=神奈川新聞社デジタルビジネス局

 
 

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