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羽田-殿町 連絡道路の工事進む
川崎の未来 つなぐ架け橋

神奈川新聞 | 2019年11月22日(金) 00:00

アシ群落の先に架設工事を臨む

 多摩川で隔てられている羽田空港と川崎市を橋で結ぶ「羽田連絡道路」の工事が、佳境を迎えている。道路延長は840㍍、橋部分は約600㍍で、多摩川河口の貴重な生態系に配慮した構造や工法を採用。台風などの自然の影響を受ける中、2020年度内の供用開始を目指し、台船を用いた架設作業などダイナミックな工事が続く。

 殿町国際戦略拠点 キングスカイフロント

 開通すれば、ライフサイエンス分野の研究機関の集積が進む同市川崎区の殿町地区(キングスカイフロント)と羽田空港が結ばれ、川崎の最先端技術と世界をつなぐ相乗効果が期待される。殿町地区のこれまでの発展や連絡道路の意義について、福田紀彦川崎市長と、同地区にいち早く進出した実験動物中央研究所の野村龍太理事長にそれぞれ聞いた。


羽田連絡道路の完成イメージ

最先端でまちに誇りを 福田市長

 ―殿町地区などの臨海部の整備状況や経過についてお話しください。
 殿町地区には、元々いすゞ自動車の工場がありました。工場が無くなった後の産業転換が課題となり、研究開発型都市の最先端として、ライフサイエンスを重点としたまちづくりを進めてきました。
 2010年の羽田再国際空港化で、殿町地区の持つ意味が格段に違ってきました。まさにこの10年で、整備方針の段階からまちが概成するまでに変化を遂げています。
 最初の誘致活動から、多くの人の協力によって出来上がってきました。実験動物中央研究所が第1号で入ってくれたのは、非常に大きかったです。国と川崎市の連携がうまくいった結果、エリア全体の価値の集積を生み、現在の形に至ったと思っています。


殿町地区の展望を語る福田市長

 ―羽田連絡道路の役割や、今後の期待について教えてください。
 橋によっていろいろなものをつなぐという意味では、日本の玄関口・羽田空港と世界最先端の殿町地区がつながることで、空港と一体的なエリアを形成できたと思います。同地区と世界の産業、さらには世界最先端の研究者同士がつながっていく、といった意味合いもあります。 
 殿町地区は、国家戦略特区でもあります。川崎市側と大田区側が一体的な産業形態になるという意味では、国家的にも大きな意義を持つ橋だと思います。殿町地区以外の臨海部にとっても、新しい産業に生まれ変わる起爆剤になると思います。


キングスカイフロントの整備状況

 ―開放的で眺めも良く、多摩川もあって気持ちいい場所ですね。
 川岸にはアシが茂っています。国際空港の真横に貴重な干潟やアシ群落が広がっているのは類を見ないと聞きました。掘った土を保管して埋め戻すなど、生態系にもかなり配慮しています。
―地区活性化のための行政の役割は、どのようなものでしょうか。
 市が設けているマネジメントセンターなど、研究者が集まって交流する場を提供することは大切だと思います。世界中の研究者が住むようになれば、住宅や病院、学校なども計画的に整備しなければならないと考えています。
―殿町地区の整備状況を、市民に知ってもらうことも重要ですね。
 市北部からもさまざまな団体の方が視察に訪れています。夏の科学イベントも大人気で、市内全域から定員を上回る親子が参加しています。「川崎の南端は世界の最先端」というキャッチコピーを広げつつ、地域への愛着を高めていきたいです。

地域全体の連携さらに 実験動物中央研究所 野村理事長

 実験動物中央研究所は、1952年に創立した民間の公益財団の研究所です。動物実験によって人間の医学・医療の発展に少しでも貢献することを目的としています。海外の公的機関と連携して、ワクチンや医薬品の安全性に関する世界標準のルールづくりに長年携わってきました。研究成果を商品化して、広く使われるようにしていくために、世界中の企業とライセンス契約を結んでいます。


殿町地区の発展の歴史を語る野村理事長

 長らく宮前区野川にありましたが、殿町地区には、2011年に移転してきました。羽田空港への近さや都心へのアクセスの良さ、そしてこの地区の開発にかける市の本気度を感じ、海外と関わる仕事を続けていくには、この場所が良いと判断しました。
 当初、他の施設はありませんでしたが、国際戦略総合特区の認定を受けて活性化に弾みがつきました。現在は医療、健康、生命科学に関わる研究所や企業など67機関が集まっています。それにつれ、比較的狭いエリアに集まる各機関で、顔の見える関係が築かれてきました。市のサポートもあって、実験場所を融通し合うなど、期待以上に地区内の連携が進みました。
 羽田連絡道路が整備されれば、国内外関わらず人・モノ・情報の流れがよりスムーズになり、地区が強化されていくでしょう。現状では、京急大師線小島新田駅からのアクセスが課題ですが、羽田からも来られるようになれば大きく変わると思っています。羽田側の国際戦略総合特区と連携すれば、相乗効果があると思います。
 今後は、殿町地区を羽田連絡道路の「終点」にするのではなく、その先の地域につながっていけるようにどう発展させるのかが課題だと思っています。

 
 

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