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双子星の成長を映像化に成功、チーム代表が夢を語る/葉山

神奈川新聞 | 2010年3月22日(月) 10:22

すばる望遠鏡で双子星を取り巻く水素ガスやちりを赤外線で撮影した画像(c)総合研究大学院大学、国立天文台
すばる望遠鏡で双子星を取り巻く水素ガスやちりを赤外線で撮影した画像(c)総合研究大学院大学、国立天文台

双子星(連星)として生まれた2つの若い恒星の成長していく姿が映像でとらえられ、昨年11月、米科学誌サイエンス電子版に公開されて話題となった。成功に導いたチームの代表者が、総合研究大学院大学(葉山町)の真山聡助教だ。恒星の成長過程と、惑星誕生の謎解明に肉薄する34歳の天文学者は「地球がいかに生まれたか、分かる日も近いのでは」と夢を語る。

真山さんは早稲田大と国立天文台で赤外線天文学を学び、星惑星形成論が専門。自ら光る恒星や、その周りを回る惑星が誕生し成長していく仕組みを解き明かす研究に取り組んでいた。

恒星の7割は双子で誕生する。観測には、生まれたばかりの双子星をターゲットにすることが最も有効だ。だが、これらは構造が複雑で、望遠鏡でとらえることは非常に難しい。

「だから多くの天文学者は、太陽のような単独の恒星に目が向いていました。双子より、構造がシンプルなので観測がしやすかったのです。しかし、それでは恒星が育つ普遍的な仕組みを解明することはできません。あえて(若い双子星を観測する)困難な道を選ぶしかないと考えたのです」と真山さん。

水素ガスやちりでできた雲状の原始惑星系円盤―いわば星を育てる「ゆりかご」―の観測に成功すれば答えが見つかるはずと考え、2005年5月、国立天文台の田村元秀准教授らと研究チームを組織した。

研究は当初難航した。ゆりかごの数は少なく、かすかな光のため地上から観測がしづらい天体。難問克服に導いてくれたのが、ハワイ島の標高4200メートル、マウナケア山頂にある直径8・2メートルのすばる望遠鏡だった。「余分な光を遮る機能が、暗い天体の撮影を可能にします。富士山頂にあるテニスボールを東京から明確に識別できるほどの能力がぜひ欲しかったのです」

真山さんは文献数百本を読破し、観測目標を10カ所以下に絞り込んだ。すばる望遠鏡の使用許可をようやく得て、与えられた期間は3日間のみ。富士山より高い天文台は空気や気圧が地上の約60%。息切れや頭痛という高山病に悩みながらの観測は続いた。

「空振り」すること数回。へびつかい座に望遠鏡を向けた時のことだ。観測を終えチェックしていた映像の一つに推定年齢400万年、約520光年のある若い双子の恒星があった。名前は「SR24」。双子に水素ガスやちりが流れ込み、成長するダイナミックな姿がとらえられていた。「周到な下準備と練り上げた観測計画が成就した瞬間で、思わずやった、と声を上げていました」とにっこり笑った。

画像を解析したところ、「双子星は腕のようなもの(ブリッジ)でつながっており、大きい星が小さい星から養分(水素ガスやちり)を吸い取り、円盤の外側からも盛んに養分を吸い取って成長している様子が分かりました。手をつないだ双子星というとかわいい印象を受けますが、実情は貪欲(どんよく)で凶暴なのです」。

この成果は、今年1月科学誌のサイエンス冊子版にも掲載された。

真山さんは、宇宙に向けてこんな思いもはせる。双子でなく単独の恒星を中心にした太陽系は、珍しい存在だ。「今回の研究が進めば、太陽系のような別の惑星系発見にもつながるかもしれません。地球外生命との出会いがそれほど遠い話ではないかも」

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