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鉄道コラム 前照灯(171)
夜汽車に乗る人たち

話題 | 神奈川新聞 | 2013年11月29日(金) 12:00

 青い客車を連ねた寝台特急「ブルートレイン」が近い将来、なくなるらしい。JRからの正式発表はないが、新聞各社が先走って上野―青森間の「あけぼの」廃止を報じている。残念でならない。

 航空機や夜行バスに押され利用客が減ったとか、新幹線開業に伴ってとか、車両が老朽化したとか。夜行列車が廃止されるたびに毎度聞かされてきた「理由」を今回も。むなしさを覚える。

 全く同じ区間に新幹線があるから、というなら(無理やりにでも)納得できないこともない。だが「あけぼの」の場合はそうではない。鶴岡、酒田、羽後本荘、東能代、鷹ノ巣、大館と、どの新幹線からも不便な都市を、落ち穂拾いのようにつないで走る。上り列車に乗っていると、小さな駅に停車するたび、数人のお客が荷物を抱えて乗り込んでくる。週末でも観光シーズンでもない平日に、だ。上野に着くころには100人を超えていることも珍しくない。

 「娘が倒れたという連絡が入ったんです、切符を取っていないけれど乗せてくれませんか」。そう懇願した客の表情が忘れられないと、かつて東海道・山陽線のブルトレに乗務した車掌さんに聞いた。新幹線で出かけて、駅前の瀟洒なシティーホテルに泊まる旅もいいだろう。だが、夜間に移動せざるを得ない人たちもまた、いる。「時代の流れ」にかこつけて、「切実な足」を奪っていいのか。(さ)

 
 

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