岩手県の三陸鉄道(三鉄)で新人運転士が初の乗務に臨んだ。そんなニュースを共同通信は11月1日、全国に配信した。第三セクターのローカル鉄道の話題としては、記事60行で写真付きと破格の扱いである。全面復旧を目指す三鉄の強い意志は、被災地やメディアに何かを訴えかける。
東日本大震災の直後に入社。津波で約5.8キロの線路を失った三鉄でがれき撤去、事務所の片付けに追われた後、乗務訓練を受けた。2年7カ月後にデビューした20歳の新人は「三鉄は復興のシンボル、地域を元気づけたい」と語った。打ちのめされても常に前を向く姿勢、逆に元気をもらう。
2011年6月、三陸を訪れた。橋は崩れ落ち、レールはねじ曲がり、がれきに埋もれた鉄路。絶望的な光景が広がっていた。訪れた宮古市の三鉄本社は、意外にも活気があった。既に一部区間で運転を再開、社員は「何年かかっても復旧させる」と穏やかに、確信を込めて話した。
三鉄は2014年4月、3年ぶりに全面復旧する予定である。津波直後の避難所で高齢の漁師は、流された船への悲しみと同様の思いを三鉄に向けていた。「船も鉄道もここでは欠かせない」と。
被災地では、赤字ローカル線復活か、バス輸送への転換か、という議論もある。ただ三鉄は、なぜか人を元気にする。(O)