川崎市に拠点を置く二つの市民劇団「超電磁劇団ラニョミリINTERNATIONAL」と「劇団川崎演劇塾」が9月、変身ヒーローを題材にした劇を合同で上演する。風刺の効いた喜劇が得意の「ラニョミリ」と、心温まる芝居が持ち味の「演劇塾」。一見真逆の特徴を持つ両劇団の“異色コラボ”だが、「劇団の枠に縛られない新しい演劇文化を発信したい」と意気込んでいる。
「待てえ!」「その声は―」「この世の悪を打ち砕く正義の戦士、レインボーダイナマイッ!」
子どもを連れ去ろうとする怪人たちを前に、変身ヒーロー「レインボーダイナマイト」がさっそうと現れ、必殺キックで次々と退治していく―。川崎市幸区の稽古場では、青や赤などの派手なコスチュームに身を包んだ団員らが時折激しいアクションを繰り広げ、熱気に包まれていた。
「ラニョミリ」は1999年旗揚げ。「一生懸命バカを演る(やる)」をモットーに、社会的なテーマを奇抜な設定で、風刺の効いた作品に仕立て上げるのを得意とする。一方の「演劇塾」は77年創立。ストレートで心温まる芝居を中心に上演してきた。
方向性は違うものの、お互い「良きライバル」として以前から交流はあったという。団員の減少など、劇団を取り巻く環境が厳しさを増す中、「川崎の演劇界を盛り上げる起爆剤にしたい」と、今回の合同公演を実現させた。
「年齢や規模も近い劇団同士。芝居をやる人も少なくなる中、合同公演は川崎の、ひいては神奈川の『演劇地図』を塗り替える挑戦になると思う」とラニョミリのミズノタクジさん(48)は話す。
上演するのは、品川浩幸氏の作品で、往年の変身ヒーロー「レインボーダイナマイト」にまつわる人間模様を描いた「レインボー・ミラクル・チェンジ!」。かつて変身ヒーローとして一世を風靡したものの、その後は役に恵まれなかった主人公・ゴローたち。「ヒーローなんて時代遅れ」と批判されながらも復活への情熱を捨てきれず、「奇跡は自分で起こすもの」と夢を受け継いでいくストーリー。笑いの要素もふんだんにちりばめられ、誰もが楽しめるという。
演劇塾の村田好行さん(47)は「テレビの前にかじりついてヒーロー番組を見ていた子ども時代を思い出してほしい」と話す。ミズノさんも「『こういうことがあったね』って僕らの世代の話をして、若い人たちも『知らないけど面白い』って共感していく世界観ができてくれば。そんな『一夜の夢』のような芝居をしたい」と意気込んでいる。
公演は9月7~9日、横浜市西区の「相鉄本多劇場」で計4回。チケットは大人前売り2300円、中高生1800円、小学生千円。大人と小学生のペアチケットは3千円。問い合わせは、合同公演事務局電話080(3252)2035。
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